3話
被害者が20人になったことで警視庁は被害者の顔写真を全国に配布し「この人を知りませんか?」と、メディアや新聞を使って世の中に広める作戦を取ったものの、数日を経過しても女性達に関わる情報は出て来なかった。そしてその頃、都内のボロアパートに居る獣医師は誰かと連絡を取りつつ「今回は30人規模で参りましょうか?」と、涼しい顔で誰かと話をしていた。
そして、うだつの上がらない定年まじかの刑事は九州に居て独自の仮設の元で捜査をしていた。ただ、刑事は今のままなら只の仮設に過ぎんとして取り敢えず聞き込んだ記録をパソコンに入力して後輩の警視に二つ目の資料をメールで受け取っていた。そして10月10日に大変な事件が舞い込んで来た。それは30人もの女性が乳房や尻肉と太ももの肉、更に陰部の肉をゴッサリと取られたと言う事件だったが、捜査員達はその数の多さに仰天してしまった。
犯行現場は都内から3時間の今は使われていない死体焼場の建物で、そこからは100人を超える足跡と30人の被害者の生の血が床や壁に飛び散っていて駆け付けた救急隊員達を驚かせた。だがそれは捜査員も同じだった。そしてそこの駐車場には100台を超えるタイヤの痕跡が認められたが誰かが車のタイヤをワザとスリップさせ真上から走り回った形跡も発見された。そして使われた葬式の焼場には指紋一つも残されていなくシャンパンり瓶が数十本置いてあって100人以上の肉の受け皿やナイフやフォークも発見された。
そして翌朝のテレビでは「美人女性ばかり狙う鬼畜の美食家は今は何処に!!」と、言う見出しで朝から世間をザワつかせていたが、捜査本部でも過去に前例のない30人の被害者の顔写真を横目にして、おぞましいと言う捜査員も多数居た。そして警視庁の発表で容疑者達の大胆な犯行に複数の関係者がいるはずだと、したものの依然として掴みどころの無い事件にお手上げ状態だと言う事は警察関係者でも話として挙がって居て、今回の事件は戦後最悪の事件として政府も警察庁も対応に追われていた。
だが、そんな中でボロボロのコートを片手に持って歩いていたのは、自分の仮説を裏付けるために行動していた「うだつの上がらない」定年まじかの刑事だった、そして彼は沖縄にその身を置いて足で裏付けを取っていた。そして「これで被害者は50人か…」と、独り言を新聞を手に持ってアイスを食べていた刑事は自分の仮説が正しいのではないかと確信してもいった。
合計50人と言う犯罪は国会でも取り上げられるほど日本と言う国の安全保障上、どうなっているのかと野党から攻撃される政府与党は「只今、警察が全力で捜査しているので今しばらくお待ち下さい」と、しか言えない状態に追い込まれていて総理大臣の支持率も少しながら下降していた。世界的に稀に見る残酷な犯罪は世間では「鬼畜の美食家」と、メディアに報道され都内では夜の街から20代の女性の姿はほとんど無くなっていた。
鬼畜の美食家と言う名が世間で使用されるようになってからも捜査本部は公安にも協力を要請し500人の捜査員を更に700人まで増員させ、捜査員は50人の写真を持って、あても無く都内を走り回っている時間に涼しい顔をしたボロアパートで獣医師をしていた男の耳には「鬼畜の美食家」と、言う名前すら入ってこなかったが、捜査本部の捜査員が暴力団の関係を調べてもいて暴力団も最近の警察からの締め付けで金に困っていると言う情報を公安から貰って捜査していた。
そんな折り、今度は取り壊しが決まっている5階建ての廃墟ビルで50人の鬼畜の美食家達の凄惨な事件が発生した。人間の手足を縛り、生きたまま自由に大勢の容疑者達が肉を切り取って喰う様(さま)を考えただけで、現場に入った捜査員と救急隊員達はその恐怖に恐ろしさを隠せなかった。前回は30人、そして今回は50人と言う女性被害者達は気が狂ってもおかしく無い状態であっただろうと関係者は皆、考えていた。
そして捜査員達が額に汗して走り回っている頃、都内のボロアパートで獣医師をしていた犯人は連日連夜にメディアで放送される鬼畜の美食家達の話題で盛り上がっていたが、獣医師は数百件と言う膨大な何者かと談笑して時間を費やしていたが、その時間、例の「うだつの上がらない」刑事は一人で東京への帰路の途中だった。彼は彼の立てた仮説を証明する証拠を持って居たが容疑者を特定出来る証拠も何も得てはいなかった。
ニュース番組で頻繁に使われるようになった「鬼畜の美食家」は、一体、何処の誰なのかと題して各テレビ局が毎日のように報道し、ある番組ではチャイニーズマフィアが絡んでいるのではないか、はたまた暴力団の資金集めではないかと世間を騒がせていた。が東京へ向かって居た例の刑事だけは違う視点を持って居た。
そして警察病院には100人の被害者が入院していて、捜査員達はその身元確認に追われていたが、50人の被害者を個室に移した病院の中では誰かを案じるかのごとく「ギイィーー!! ギイィーー!!」と、言う唸り声で他の入院患者たちを不安にさせていた。捜査本部では監視カメラを増大させて捜査員を常駐させ被害者達の行動と唸り声に目と耳を疲れさせていた。
しばらくして、例の「うだつの上がらない」刑事は、東京に戻り資料を揃えて捜査本部に足を運んだが捜査員の姿は何処にもなく居るのは電話連絡をする留守番警官達だけであって、資料を預けられる信用に値する人間は居なかったことで、一旦帰宅して風呂に入りしばらくぶりに着替えてパソコンの前に座ったが、この犯人を見つけることは永遠に不可能だろうと考えていた。
一人一人の女達の身元は解らないが「うだつの上がらない」刑事は、間違いなくアレが原因だろうとまとめた資料に目を向けていた。そして10月も半ばを迎える頃、捜査員達は「どうせ犯人を逮捕しても傷害罪くらいだもんな~」と、弱音を吐露する捜査員も少なくは無かった。オマケに被害者達は相変わらず「ギイィー ギイィーー」と、しか言わないし更に言えば被害者達は恥の概念が無いのか、裸で四つん這いになって病院内を走り回るしと、病院に張り付いている捜査員達を困惑させた。
そして数日が経過した折の事、突然、上からの命令で捜査を打ちきれと一課長を呼び出した警視総監は顔色を白くして政府からの命令だと豪気を強めた。理由は私にもわからんがこれ以上、捜査しても無駄だろうと警視総監は話をつづけた。もし「愉快犯」なら、警察が捜査を止めれば、もしかしたら犯行を止めるかも知れんしとも付け加えた。
そして自分の部屋に戻った捜査一課長は、捜査員達を10人程集めて「今、日本で医師免許を取得している人間を片っ端から当たれ!! そして休業していたり休んでいる医師も対象に含めて裏付けを取ってくれ!!」と、豪気を強めた。捜査員達は警察病院の担当医師から聞いた神業とも言える腕を持った医者を当たる事とした。
捜査一課長は時間がさほど無い事に頭を痛めていた。もしこのままで捜査を止めれば今後も続く恐れと、現在進行形の捜査終了は警察の敗北を宣言するのと同じだからと、独り言を窓の外を見ながらつぶやいた。捜査員達は一課長の浮かない顔を見て「もしかしたら捜査中止か?」と、動揺して顔を強張らせた。
そして翌日、700人の捜査員達を本部に集めて「もう我々には時間が無い!! もしこのまま捜査が打ちきりとなれば今後、日本には未来が無い!! もう警視庁の刑事も所轄の刑事も肩書は全て外せ!! そして捜査を続行してくれ!!」と、正立して捜査員達に激を飛ばした。捜査員達は一斉に立ち上がり一斉に敬礼した。
そんな折、例の「うだつの上がらない」定年まじかの刑事は一人、歩いて一課長に敬礼すると顔を上げた。その瞬間、一課長は咄嗟に「親父さん!! ご無沙汰しております!!」と、敬礼して頭を下げた。いやいや私はもう定年が近いので〇〇君に話したいことがあるんだがと、一課長の名前を呼ぶと捜査員達は騒然となって一課長の方を見て、ヨレヨレのスーツに身を包んだ刑事は、耳打ちして一課長に「ご一緒に一課長の部屋へ同行してよろしいでしょうか」と、聞くと一課長は頭を数回下げると「うだつの上がらない」刑事は元の席に戻って行った。
そして一課長室に同行した刑事(親父さん)は、全国を歩き回って確信した内容を資料としてまとめたパソコンを話しながら手渡した。しかし、どうしてそこまでして… と、親父さんに聞くと20年間、ずっと気になっている事件があって… と、一課長に話を伝えると一課長は親父さんの目の前で正立して深く礼をいい頭を下げた。
しかし良く調べましたねー! すると親父さんはそうだな~ 都内なら警察手帳も使えるんだが地方だと我々、地方公務員は警察の捜査権が無いから半ば探偵みたいに調べたんだよと笑った。そして親父さんはこうも付け加えた。もし調べが的中するとしたら被害女性達を家に帰してやりたいんだ。そして「まあ、私に出来ることはここまでが限界だな」と、口元を緩めて立ち上がると一課長に深く頭を下げると課長室を出て行った。その後ろ姿に一課長は胸が苦しくなるような気がした。
捜査一課長は部屋から出て捜査本部に戻るとソコには親父さんの姿は無かったが、親父さんの苦労を無(む)にしないために、一課長は本部の捜査員200人を全国に派遣を決めるとそのまま、警視総監室へと足を運んだ。そして警視総監に親父さんが調べた資料を見せると捜査の続行を願い出て警視総監もコレに同意した。
そして全国へ飛んだ捜査員達は事件があったとされる被害者の写真を持参してDNAの鑑定書を持参して地方都市の捜査本部に協力を要請すると、全国の本部はさっそく科捜研にDNA鑑定を依頼した。そして事件解明迄、あとわずかだと確信していた捜査員達に帰って来た答えは該当者無しと言う結末が待っていた。「それは何故?」と、言う疑問に対して「地方の捜査本部では当時、DNA鑑定は行われて居なかった」と、科捜研から事実を明らかにされたと言う。
全国へ飛んだ本部の捜査員達は同じ壁にぶつかっていた。そんな折、捜査員達は自分の捜査に疑問と限界を感じてもいた。しかし九州に飛んだ一人の捜査員は「未だに何かでもない限りDNA鑑定なんてしてないからな」と、苦しい胸の内を吐露していた。そしてそんな折、捜査員達は新潟に身を置いて、当時犯罪に巻き込まれた家族のDNAの提供を申し出たところ、その家族は「喜んで協力します」と、捜査員達を俄かに喜ばせた。
そして全国へ飛んだ捜査員に対して家族からDNAの提供に協力して欲しいと説得して回っていた。そして数日が経過した時、全国へ飛んだ捜査員達はDNAの鑑定書を持って次々に東京の捜査本部に帰って来た。そして鑑定書は科捜研に送られ被害者達のDNAと比較する作業に入った。
ところが、捜査員達に小さな光が見えた時、事件は起こった。都内から2時間ほど走った廃中学校の中で、100人の被害者に救急隊員は仰天し顔面蒼白状態になった。それは捜査員も鑑識も同じであった。現場の教室には発電機が置かれていて壁や床におびただしい血液が飛び散り、その床からは数百人の足跡が発見され、机を四角に囲ったテーブルに見立てた机の上には数百枚の皿やナイフにフォークが散乱していて飲み残しのワインやシャンパンの瓶が発見され、ガスコンロも50台以上見つかり使われたと思われる鉄板からは焦げた肉片が多数見つかった。
更には醤油にワサビと言った和式の食事の形跡も見つかった。これぞまさしく「鬼畜の美食家」であろう事は明白であった。そして次々に警察病院へと搬送された被害者達を心配してか、他の入院患者からは「ギイィー!! ギイィー!!」と、仲間を心配しているような唸り声が病院内に響き渡った。そして翌日もメディアが大騒ぎして「今度は100人が犠牲に!!」と、言う大きなワイド番組が放送され世間は暗黒の中にいるようだった。
犯人達の大胆な行動は多くの女性達に影響を与え、20代の女性達は会社や学校から真っすぐ帰宅すると鍵を二重にロックして窓には厚手のカーテンを付け替え、自分の部屋から明かりが漏れるのを防いでいた。そしてスマホを手に持ち光が外に漏れないように工夫してニュースに張り付いた。
そして数日、科捜研から100人分のDNA鑑定書が警視庁の捜査本部に回って来て、その何れもが捜査員達が集めて来た鑑定書と100%一致したと言う内容だった事に捜査員達は個々に心の中で喜んだものの、新たに発見された100人の被害女性達の血液採取も警察病院に依頼した。
そして一課長は「やはり親父さんの読み通りか…」と、親父さんに心の中で敬意を示した。だが現場となった廃中学校には数百人の足跡があって、駐車場として使われたであろう校庭は竹ぼうきのような物で全てがかき消されていた。そして今回の事件は複数の犯人なのか大勢の犯人が加わっているのかと言う疑問はまだ明らかになって居なかった。だが100人の被害者を出したと言う事は客観的に見ても単独犯ではない事は明白だった。
そして警察では捜査を開始していたが、ボロアパートで獣医師をしている男は「昨夜は皆さんお集りになられて楽しい一夜でしたね~♪」と、数百人に連絡を入れた一方では、獣医師は何処かに電話して「牧場の方にはまだ肉はあるか?」と、神妙な面持ちで話しをしていて「今回はお客さんの要望も強かったからパーティーにしたが、しばらくは休みにしようか?」と、誰かに指示していた。
数日後、一課長の元へ科捜研からの報告が入って居て、今回の被害者達もDNAが一致したと言う内容に一課長は「これで200人全員の身元が解ったな…」と、息を大きく吸うと「果たして今の状況で家族の元にあの被害者をそのまま返しても良いものか…」と、思案にくれていた。だが相変わらず警察病院では裸で四つん這いになって走り回る被害者達だった。
100人の犠牲を出したあの事件から数週間が経過していて、このまま事件は終わるのかと思われた10月も半ばを過ぎた頃、再び事件は発生した。その日は東京でも秋を感じさせる涼しい風が吹いていたが、東京から車で2時間ほど走った他県の今は使われていない廃村の中にある廃小学校の体育館の中で事件は発生した。そして50人の被害者を出した事件は考えただけでおぞましい事件だった。
床も机で作った大きなテーブルの上には前回同様だったが何処にも血液が飛び散った痕跡が無かったが、数百人の足跡が発見され前回と違うのはガスコンロで肉を焼いて喰うのではなく、生きた女性に直接ガスバーナーの激しい火を浴びさせて焼けた頃に直接、肉をを箸で喰うと言う考えられない残虐な方法だと、後に科捜研では情報を捜査本部に入れた。そして救急車で運ばれた人数は100人にも上がりこれで犠牲者は300人に跳ね上がった。犠牲者の身体は焼け焦げていて警察病院の医師も「これでは自然に元々の身体になるのは不可能だ…」と、捜査員達に声を細めた。
「何て言うことだあぁ!! よくもこんな鬼畜な事が出来るモノだ!!」と、一課長は目を閉じて怒鳴り声を出した「女性達に直接火を浴びせて焼けた所から箸で取って喰うなんてことがあっていいのか!! まるで秋刀魚でもあるまいし!!」と、捜査員達に背を向けてホワイトボードに拳を振り上げた、捜査一課長は両手に拳を握って、まだ解らない犯人達を憎むように肩を震わせた。
世の中は、この「鬼畜の美食家」に、震えて暮らす日々を余儀なくされ夜の街からは20代の女性達は一斉に姿を消した。まさに身の毛もよだつ事件の内容に女性達はベッドの上で布団で頭を隠して眠る日々を繰り返しいたが、警視庁が持って居る特殊な事情はマスコミにも発表されていなかった。
そして捜査本部では被害者の女性達の身元確認しながら「鬼畜な美食家」への、捜査を行っているが何も掴めては居なかったが「どうやって100人もの女性を運んだんだ?」と、と言う疑惑に捜査員達は犯行当日に貨物用の4トンか10トントラックを借りた人物はいないか調べつつ、保持している運送会社にも捜査の目を向けた。だがさすがに都内は広すぎて的を絞ることも難しい状態であったが、最大の謎は被害者達は抵抗しなかったと言うことだった。
抵抗していれば身体の何処かに怪我していても良さそうだが300人の被害者には抵抗して出来た傷が無かったと言うことが謎を更に広めて行った。700人の捜査員達は全力で運送会社や個人でトラックを保持している者を聞きこんで居た。ただ、最近発生した事件の晩に10トンくらいの大きな貨物トラックを自宅の窓から見たと言う情報を得た捜査員達は見たと言う人物から「ここいらの人間じゃ無いだろうね、そもそもこんな場所の道を通るトラックがいるはずが無いしトラックは何かを探すように低速で走っていた」と、情報をくれた男性は言った。
そして一課長の頭をよぎったのは「まさか被害者達は自分からトラックの荷室に入っていたのでは無いか」と、言う仮説を立てて見た。そして「もし被害者が自分からトラックに乗ったのであれば抵抗した時の傷も出来ないだろうし…」と、自問自答を繰り返して居た。一課長は、再び警察病院に部下を派遣して被害者の身体に抵抗した形跡があるかを聞くように命じた。
すると警察病院での担当医師達は被害者の身体には抵抗したような傷は無かったと語ったと言う。そしてそれを聞いた一課長は「やはりそうか… 彼女たちは自分からトラックの荷室に乗ったのだ」と、自分の仮説に少しだけ裏が取れたような気がしていた。するとトラックを見たと言う人からトラックの荷台には運送会社の名前も屋号も無く色は白だった事が判明したことで、捜査員達は運送会社を外してレンタカーや個人所有のトラックに絞って捜査を開始した。
だが人口が密集する大都市東京で白色のトラックを探すは途方も無い時間と労働力が必要だった。そして捜査員達は「白色の大型のトラックに的を絞って陸運局へ出向き個人所有の手がかりを探したが、中々ヒットせずに内心は不安さえも感じていた」と、言う。だが、中々白色の大型トラックを発見するには相当の時間がかかったが未だに発見出来ていなかった。捜査員達は白色の大型トラックを探していたが、実際にはトラックの色は白ではなく犯人達は屋根だけを残して元々はシルバーだった色の上から白い塗装を施して走って居たことには誰も気づいてはいなかった。そして犯行後に犯人達はトラックの色を元々のシルバーに戻していた。
そして警察病院に入院している被害者達は互いに交信するように「ギイィー!! ギイィー!!」と、朝から晩まで病院の中に唸り声を発していた。本来なら大学付属の病院に入院させるべきだろうが事情も事情だったことから被害者は全員、警察病院に入院させていた。そして廃村辺りから走って来たであろう黒塗りの高級車が数百台も一定の間隔で深夜に走っているところを目撃されていたことを捜査員達の聞き込みで解った。
被害者の数も300人を超えてきた頃、親父さんは犯行のあった場所を一か所ずつ見て回って一つの疑問を感じていた。何故、犯人達は鬼畜な所業をする割に後片付けをせずにそのまま放置して引き上げたのだろうかと、いや、鬼畜だからこそ敢えて後片付けをしなかったのか… だが警察病院の医師の話しでは犯人と思われる神業とも言える医療関係者が関与している。果たしてそんな腕の持ち主が犯行現場をそのままにして逃げる物だろうか… まして現場の駐車場の後片付けは念入りにしている… 犯人(首謀者)はどんな人間なんだろうとずっと考えていた。しかも被害者達は自分からトラックに乗った可能性があるとも聞いていた親父さんは医療関係者も居ただろうが、動物に詳しい者も関与している可能性に着目していた。
それは親父さんが全国を単独で捜査して得た情報が正しかったことだが、ならば被害者達は何処で何をして暮らして居たのかと言う疑問も親父さんの脳裏をかすめた。都内なのかそれとも地方なのか、全国から集められた彼女たちは警察病院で意思の疎通をしているとも聞いている親父さんは「もしかしたら…」と、重い腰を上げるとそのまま次の現場へと足を向かわせた。
そして親父さんは実際に警察病院に出向いて彼女たちの「イギイィー!! イギイィーー!!」と、言う声の大きさを考えれば「マンションではなく都心から少し離れた場所に被害者達は集められ一緒に暮らして居たことになる」と、思いつつ一度に数百人が誰の目にも触れることなく生活出来た場所を地図を見ては、一人で頭の中に仮説を立て、しかもソコは今でも使われている場所… しかも人間なのに二足歩行が出来ず四つん這いで生活していた場所なら絞れるかも知れないとまた一人で歩きだした。
その頃、まだトラックの発見に辿り着いて居ない捜査員達は額に汗して聞き込みしていたが、親父さんは最後に使われたあの現場方面から夜中に走って消えた高級車のことも頭から離れなかった。一度に数百台の高級車なんてどう考えても客としては相応の身分で、場合に依っては政財界に関連した人物かも知れないと思ったが、取り敢えず被害者達が暮らして居た場所の特定が先だなと思って「一度に数百人の食事の材料の仕入れも苦労しただろうし、風邪を引けば相応の風邪薬も必要になるし、一体どんな場所なんだろう」と、考えていた。
そうか… ここが最後の現場か… 親父さんは竹ぼうきで消された校庭を見回してその徹底ぶりに再び見張り番の警官に手帳を見せると現場へと足を踏み込んだ。何かが焦げた匂いにむせ返りながら鑑識も科捜研の調査も終わっている現場の中で一人、立ち尽くすと頭の中で犯行当日の状況を思い浮かべ被害者全員の誰も抵抗せずに身体を焼かれたのか? と、額から汗ポリと落とし… 誰も抵抗しなかったと言うのは余りにも理不尽と言うか合理性に欠けると額を左手で押さえながら現場の中をグルグルと回っては立ち止まって「絶対服従の条件とは何だ?」と、頭を傾げて想像すると動物園が頭をよぎった。
飼われている動物のように絶対服従をさせるには食事(エサ)か… と、窓の外に視線を移して、飼育員が必要だな… それも一人や二人じゃないなと、仮に500の動物を飼育するとなれば相応の人数と食料が必要となるはず… なら、廃動物園とか山中(やまなか)の、大きな施設か… と、パソコンを開いて都内周辺の山中の施設を検索して見て「この辺りなら買い物も便利だし500人以上でも飼育できるかも知れんな~」と、現場を後にした親父さんはバス停まで歩いて降りると日が沈みかけていた。
その頃、ボロアパートに住む獣医師はスマホに記憶させている客達に前回のお礼を次々こなしていき、次回の案内も後ほどハッキリしますからと笑みを浮かべたが獣医師の目は冷たく氷のようだった。そして同じく親父さんの目も鋭い鷹の目のように光っていた。
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