2019年6月26日水曜日

泥棒Ⅱ

◆◆◆◆◆1話




 

「あらぁ~ まただわ! また下着が無くなってるぅ!」

 ベランダの物干しを見詰め頭から湯気を出す俺は、エリートとまでは行かないがそこそこの企業に勤めるサラリーマンで、新入社員だった頃に先輩に連れられて行った女装クラブを切っ掛けに、目覚めたと言う自分なりの設定の通称、自宅女装子(じょそこ)だ。

 実のところ、女装は中学一年の頃から目覚めていて高校生の頃には、既に女装道を極めていたと言っても過言ではなく、大学生の頃には身体も成熟し既に胸(ちくび)は開発済みでオナニーの時は殆どが、女装のまま乳首だけでイクこともあった。

 ただ、万一に備え事が露見した時のために周囲に対して言い訳をと考えた時に、会社の先輩で今は直属の上司でもある課長の所為にしようと日々、頭の隅に置いている状況だ。

 上司である先輩は社内では有名な女装フェチとして知られ、彼に女装クラブに連れられて行かれた新入社員は既に100人は超えているのは周囲の承知のことだから正直、俺は隠れ蓑に利用しようと考えていた。

 この自宅と言えば、自宅女装子をするために入社以来、8年間も身を粉にして働き少しずつ金を貯め、25年ローンで買った15階建ての最上階の4LDKを手に入れたのは、先月の30歳の誕生日を迎えた時だった。

 何故、最上階かと言うと話は簡単「ムフフフフフ~♪ 一度でいいから外に… 女になって外に出て見たかったのよおぅー♪ アッハハハハー♪」と、大きなベランダでクルクル回る俺。

 ところが、ここに入居して一週間経ったある日のこと、俺が会社へ出勤する前に洗濯しベランダに干して行った下着が帰宅すると無くなっていた。

 ここは15階の最上階、下着泥棒に取られた可能性は低く「飛ばされたのかな…」と、下を覗くと吹き上げる風が顔に「ビュゥーン」と、当たった。

 更に数日後、今度はベランダの内側に物干しを移し風の当たらない場所に干して出かけるものの、帰宅するとやっぱり無くなっていた。

 本来なら家の中に乾燥機もついているんだが、それは使わず、俺は敢えてベランダに干しておいて帰宅した時に自分の下着(おんな)を見て感動に浸りたいと言う一心からだった。

 会社から帰宅し中に入り「フッ」と、ベランダの方を見た時、女になっている時に自分が身に着けていた下着やストッキングが風に揺らめいているのを見たい一心で干して出かけたのに、俺は2度も裏切られ「これは、おかしいぞ!」と、さすがに泥棒説を疑い始めていた。

 記念すべき一度目は、お気に入りで滅多に履かないピンクのフリルが可愛いパンティーと、揃いのキャミソールとニーソックス。

 二度目は黒いガーターベルトにレースストッキングにクロのミニスリップ、当然パンティーも黒のスキャンティーを投入したものの見事に消滅。

 ベランダに出てみたところで、左端の角部屋だから当然左は何もなく、あるのは右側に防災扉を挟む同じ間取りの部屋の住人だか、防災扉は壊れた形跡もなく床との隙間は20センチ弱くらいだから入るのは不可能だ。

 まさか警察に届けるわけにも行かず誰にも相談できないまま、俺の夢にまで見たベランダで風に揺れる下着たちの風景は暫しのオアズケと言ったところだ。

 折角25年ローンを組んで8年間も苦労とて買ったのに… 今の俺は敗北感で一杯になっていたが、そんな俺を慰めてくれるのは男物の衣類の10倍はあろうかと言う通販で買った女装グッツたち。

 昼間会社へ行ってせっせと働き、帰宅してから翌朝までの時間のために組んだ25年ローンを無駄には出来ないと俺は泥棒と対決姿勢を強めて居た。

 白いビキニショーツにグレーのパンティーストッキングを履き、ブラジャーの上に白のロングスリップ、そして紺の袖なしワンピースを着た俺は「もう一度… もう一度、仕掛けてやるわ!」と、ソファーで足組をし意気込んで窓からベランダに見入っていた。

 


 

◆◆◆◆◆2話






 ワインレットの色と木の温もりを伝える木目が美しい特別注文したダブルベットに、ふかふかの白いシーツとベットの周りを天井から覆う花柄の室内カーテンが、朝の光を和らげて俺の瞼へと伝える。

 ピンク系の薄地ネグリジェに身を包んだ俺が、静かに目を開きベットの上で上半身を起こせば、襟元から胸にかけての幾重にも重なったフリルたちが「おはよう♪」と、語りかけてくる気がする。

 ベットから出てカーテンのリモコンのボタンを一つ押し、ベランダのある大きな窓へと近づけば朝の陽射しは俺のネグリジェを通過し、肌にフィットしたファンシーな下着たちを浮き上がらせる。

 遠くの街のエステに出掛け、高い金を払いスベスベのツルツルにした自慢の脚は、朝の陽射しを心地よく受け入れ床に影をかもしだす。

 誰も知らない秘密の胸は、目立たぬようにとAカップに豊胸し、女性ホルモンの投与で人知れず徐々に丸みを帯びて行く身体は、歩く都度に「プルプル」と、女性の柔らかさを空気に伝える。

 遠くまで見渡せるベランダ前の大きな窓辺に「ポツン」と、置かれたフカフカのロングソファーの前に立ち「スルスルスルッ」と、ネグリジェを脱げば「ツンッ」と、乳首に引っかかり、俺を「ビクゥッン!」と、させる。

 ノーブラのままパンティー姿のままソファーに腰を下ろせば、俺の柔らかい身体を「フワッ」と、優しく受け止め真っ赤な朝日が俺の胸を赤い色を染める。

 背凭れに身体を静かに沈め視線を下に向ければ、赤いマニキュアが塗られた脚の爪は朝日の赤に姿を潜め、やがて部屋の中は赤一色に統一される。

 真っ赤な朝日が街並みを静かに染める頃、独り、目を閉じ晒した胸に両手をクロスさせ女としての恥じらいに俯いた俺。

 腕の温もりが乳房に伝えられ、何気なく動かした腕が乳首に触れると「ビクッン」と、俺の全身を振るわせ、パンティーの中で萎縮したペニス(クリトリス)から恥ずかしい液体が滴るのを感じた。

 両脚を少し開いて、真っ赤な朝日に自らの恥ずかしい姿を見せつけ、背後からの見えない力に両手を広げられた時、女(おれ)は恥ずかしさの余り頬を紅色に染めた。

 両手が見えない力によって腰へと封じ込められた時、何者かの二本の手が女(おれ)の胸を同時に揉み回し、恥じらいに目を閉じ俯く俺の乳首に何者かの指が絡みつくと「ビクンッ! ビクンッ!」と、全身をビクつかせ「アン…」と、女(おれ)に誰にも聞かれたくない声を出させた。

 何者かの二本の手は両胸そして、開かれた太ももの上をヘビのように這いながら女(おれ)を辱め、次第にヘビはパンティーの中へ「スルスル」と、身を潜め女(おれ)から溢れた愛液に自らを浸し嫌らしくクリトリスを攻め立てた。

 左の乳首は何者かの愛欲につぼみを硬くし、ヘビはクリトリスに執拗に絡みつき、女(おれ)の身体は朝日に染まったまま辱めを受けながらソファーに全身を沈めた。

 剥ぎ取られ投げ捨てられたパンティーはグッショリと濡れ、重さを音に変えて床に静かな音を伝えると、何者かは激しさを増して女(おれ)に愛欲の全てをぶつけた。

 揺れる女の身体と、静まり返った部屋に幾度もコダマする女のヨガリ声と、激しく揺れるソファーの音が重なり合うと女は「……………」と、声にならない唸り声を出し失神した。

「ジリリリリリリリリー!!」と、突然の音に驚いた俺は起き上がって辺りを見回すと、陽はすっかり上り慌てて時計を見ると既に出勤時間を大幅に超えていた。

 大慌てでスーツに着替え、家を出てエレベータに駆け込みボタンを押そうとすると「一階ですか?」と、俺に声かけてきた二十代半ばの男に「おはようございます」と、俺が朝の挨拶をすると「今朝はゴミの日ですから…」と、相手の男はゴミ袋をチラと見た。

 15階から階数が12階、10階と下がって行くと、男は俺に「お隣さんですよね♪」と、話し始め「サラリーマンなんですか?」と、更に俺に繰り返し「えぇ、まぁ…」と、俺が返事をすると「珍しいですねぇ、ここにサラリーマンの方がいるなんて初めて知りました♪」と、目を俺に合わせないように男は笑みを浮かべた。

 10階から8階へ降りた頃、男は「○○と申します♪ 宜しく御願いします♪」と、微笑みながら軽く頭を下げると、俺も相手に合わせ名乗りはしなかったが「宜しく」と、重苦しい時間が早く終われと心の中で祈った。

 相手の男は二十代の半ばで、身長は160センチくらいと俺より10センチ低いくらいだったが、顔はガリガリに痩せていた割りに服の所為か身体は小太りと言った感じだろうか。

 一階へ到着した俺は会社へと急ぐべく、エレベーターから真っ直ぐ玄関を出ると突然「プップゥゥゥー!」と、車道をこちらに勢い良く走る外国のスポーツカーが見えたと思うと、目の前で「キイィィー!」と、急停車して「会社は○○ですよねぇ! 送りますから乗って下さい!」と、窓から顔を出したさっきの男。

 時計を見て時間が無いことに気付いた俺は「すいません! 宜しく御願いします!」と、相手の好意を受け入れることに… 車は俺を乗せるとカーナビを操作し「ピコピコピコ」と、セットすると指示どうりに俺を乗せ軽快に車を走らせた。

 暫くして道が混み始めると、男は「ちょっとワープしますから掴まってて下さいね♪」と、助手席の俺に、前を向いたまま言うと突然、車は倉庫街の中に入り入り組んだ道を左に右にとハンドルをきり「大丈夫! 時間までには間に合いますから♪」と、俺に自信を見せつけた。

 予定していた時間よりも遥かに早く着いた俺は、何度も相手に礼を言うと余裕気分で会社の前の階段を上り始めたが、一つの疑問が浮上した「何であの人は会社の場所しってるんだろう… エレベターの中では話してないはずだが…」と、記憶を確認しながら会社の中へと俺は入っていった。

 そして俺は隣の男と会うこともなく数日が過ぎて行ったある日のこと、会社から帰宅した俺の家のチャイムがなってインターホンに出ると「毎度さんでーす! 宅急便でーす♪」と、○○運送と書かれたジャンパーと帽子の男がモニターの向こうに立っていた。

 俺の家に届けられたミカン箱くらいのダンボールを見て「心当たりが無いんだけどなぁ~」と、配達員に俺が首を捻って見せると「ここの住所になってますが…」と、困り顔して見せる配達員が「取敢えず置いてきますよ♪ もし違ってたら連絡頂ければ引き取りに参りますから♪」と、俺に目を合わせた。

 心当たりの無い「ズッシリ」とした荷物を持ってリビングに来た俺は、いつものように女になろうと寝室へ向かったものの、箱の中身が気になってリビングへと引き返し箱を開けてみることに…

 宛先は俺の住所、そして宛名も俺の名前のダンボール箱を開けると上紙が入っていて「この度は弊社を利用して頂き誠にありがとうございました」と、印刷されたレターが一通。

 更に上紙とレターを取り除いて見ると「御注文の品を御確認下さい、更に御支払いも先払いになっておりますので特典と致しまして、サービス品を同梱致しました」と、書かれたレターが俺の首を捻らせた。

 レターの下にある何かの入ったビニール袋を取り出すと、光沢のある白のシルクのロングドレスが入っていて俺を「ドキッ!」と、させドレスの下も、またその下も高そうなスカートやらブラウスやらが入っていた。

 ドレスが5着とワンピースが5着に、スカートやらブラウスやらと箱の中には「ギッシリ」と、女物が入っていたが、何より驚いたのは何故か俺の身体にピッタリのサイズだったことだ。

 それからと言うもの、数日おきに俺宛の品物が宅配によって届けられ、見る見る間に10箱にもなった翌日のこと「素敵なレディーには素敵なもので身を包んで欲しい…」と、送り主と思われる相手からの手紙が郵便受けに入っていたものの、切手は貼られてはいなかった。

 そして「○○家具でーす! お届けに参りましたー♪」と、大きな箪笥が2つと洋服ダンスが1つ俺の家に届けられたが、これも既に支払い済みになっていて俺を怖がらせた。

 届けられた箪笥は別の部屋に入れられ、俺は恐怖に顔を引き攣らせ10箱の中身を一枚ずつ丁寧に箪笥にしまいこんだ。

 シルクのパンティーは蛍光灯の光に光沢を増し、外国製のガーターストッキングにガーター付きスリーインワンも、いくらするんだろうと目を見張る高そうなものばかりで「気軽には触れない物だ…」と、俺は仕舞った下着を見て手をそっと引っ込めた。

 中には俺のサイズを図ったんじゃないのかと思わせるようなブラジャーまでもが、色とりどりに柄も豊富にと、一箱まるごと入っていて「もしかしたらストーカーされてるんじゃ…」と、俺を怖がらせた。

 苦労して手に入れてマンションライフは、このストーカーの所為で俺から女へ変身する時間を奪って行った。

 相変わらず送られて来るダンボールは、ハイヒールからパンプスに至り、化粧品や香水にまで広がりを見せ仕舞いには、カツラの24個セットにまで及び「もう来ないでくれ!!」と、頭を抱えていたある夜のこと「お届け物でーす!」と、宅配が来て置いて行った100本のバラの花束の中に入っていた「レディーには真っ赤なバラがよく似合う」と、書かれたメッセージに俺は花束を床に落とし両手で頭を抱えてしまった。

 この送り付けが始まって以来、俺はすでに2ヶ月近く女に変身出来ずに男の姿のまま恐々として日々怯えながら暮らし、送られたものをネットで調べると既に数百万円にも上がることが更に俺を恐怖えと導いていた。

 送られた物を見ることもなく「今夜は来るな! 来るなよ!」と、チャイムから目を離せずに俺はいた。

 思えばローン買いながら、トントン拍子に15階の最上階を手に入れられたのも、幸運と言うべきか抽選に一度も落ちることなく、勝ち進んだ俺の強運が今にして思えば恨めしい。

 何処の誰とも分らん人から届けられた数百万円の物に、袖なんぞ通せるはずもなく、まして後になって何かトラブルになって「返せ!」なんてことになっても返せる金額じゃないし、警察に届けるたって何か採られたならともかく逆のことだしと俺の頭はパンク寸前になっていた。

 そんな翌日の朝、ゴミ出しの日に気付いた俺はゴミを持ってエレベーターに向かうと「おはようございます♪」と、後ろから元気な声を廊下に響かせた誰か。

 後ろを振り向くと「あれれ、何か痩せましたか?」と、声掛けてきた隣の男に「あぁ、あの時は助かりました」と、頭を下げると「よかったら僕が持って行きますよ♪」と、俺のゴミに手をかけ「ニッコリ」と、微笑み「チラッ」と、俺を見た男の手が、俺の手に触れた瞬間「どっ! どうも… あはは… す! すいません!」と、隣の男は一瞬、顔を真っ赤にして額に汗を滲ませオドオドし始めた。

 そんな隣の男の態度を見た俺は何故か違和感を覚え「どうかしましたか?」と、聞くと男は「あ! いえ! 何でも!」と、再びオドオドし膝をガクガクさせ、男は持っていたゴミを「バサッー!」と、エレベーターの前の床にぶちまけてしまい、慌てて拾いはじめた男のゴミ袋の中に目をやった俺に「見ないでーー!」と、男は突然、俺を凄い形相で見ると顔色を真っ青に変え、そのまま自宅へと走り戻ってしまった。

 アイツは確かに俺の手に触れた瞬間、態度を変化させたが、あの男の態度に疑問を抱くことはこの時、まだ無い俺だった。






◆◆◆◆◆3話






 いつものように仕事を終え「今日も何も届きませんように…」と、祈るように地下鉄を降りて自宅マンションへ向かった。

 エレベーターでは「どうぞ隣人(アイツ)に会いませんように…」と、心の中で神様に手を合わせるように開いたドアの左右をチェックしてから降りると一目散に自宅のドアまで駆け足。

 家の中に入った俺が「ホッ」と、胸を撫で下ろし「フッ」と、足元を見ると何やら白い紙切れが見え「何だろう?」と、拾い上げると「此間は突然、大声を出してすみませんでした… つきましては近くにあるレストランで食事に招待したいのですが… 隣人より」と、携帯のメルアドが記入されていた。

 メモを見た俺の頭の中には「何故に男とレストランで飯を食うんだよ… コイツ、アホなんじゃないのか?」と、口元で薄ら笑みを浮かべ家の中に俺は入った。

 酒でも奢りますってなら分るが『レストランで食事に招待したい…』と言う隣人のメモを思い出し苦笑いして遠くの見える大窓の手前、ソファーに腰を下ろし「しかも近くのレストランなんて… うん? 近くのレストランて言えば… まさかな… ふっ♪ おいおいまてよまてよ~♪ アイツの車にしろ確かに金持なのは間違いないが… いくら何でもあのレストランじゃねえだろう~ あそこならコーヒーも一杯2000円くらいしそうだが… 待てよ待てよぉぅ~ もしアソコならすげーじゃん♪」と、薄ら笑みが歯を見せる程の笑い顔に変わった俺。

 俺は後先何も考えずにメモに書いてある隣人の携帯に「お誘い感謝します」と、メールを打ち込むと、即効で俺の携帯の着信音がなり見てみると「では、本日は如何でしょうか?」と、返事が返ってきた。

 店の名前を見た瞬間何故か俺は「ヨッシャァー!」と、一人ガッツポーズを決め「普段着で参りましょう」と、言う隣人のメールを鵜呑みにする訳にも行かず「これだ!」と新調したばかりのスーツに身を固め部屋を出ると「ありゃりゃ?」と、俺の姿を見て目を丸くするジャージ姿の隣人。

 俺は結局、部屋に戻って隣人に合わせるようにスウェットとトレーナーに運動靴と言う姿で部屋を出て、隣人の後を突いて行くと「迎えの車が来てますから♪」と、嬉しそうに玄関先で外と俺の顔を「チラチラ」と、見往復した。

 玄関を出るとそこには「ちょ! ちょっと待って下さいよぉ! まさかこれで?」と、車の横で一瞬、軽く後退りした俺に「レストランの送迎用の車ですから気にしないで下さい♪」と、ドアの開いたロールスロイスに「サッ」と、乗り込んだ隣人。

 車の中から手招きする隣人に引き寄せられるように、及び腰で乗り込んだ俺に「今夜は貸しきってますから…」と、平然とした顔する隣人に「………」と、無言で相槌を軽く打った俺。

 黒塗りのロールスロイスは街中を流れる清流のような静かさで進み、やがて五つ星の前に到着すると入り口の前に大勢の店の人達が階段の両脇に整列し「いらっしゃいませ!」と、頭を下げて出迎えた。

 俺は生まれて初めて全身に震えが走った瞬間だったが、隣人は当たり前のような顔して160センチのジャージー姿を階段の真ん中に浮き立たせた。

 エスコートされ広すぎるほどに広い店内に入ると、全ての椅子もテーブルも片付けられ中央部のシャンデリアの下に一つだけ「ポツン」と、灯りに照らされた席とテーブルが見えた。

 周りを暗闇に覆われた席に着くと「君、ここは禁煙だけど今夜は許可してもらえるだろうね」と、蝶ネクタイの品のいい店の男に… 男は「かしこまりました…」と、軽く頭を下げると灰皿を別の者に用意させ姿を消した。

 見たことも聞いたこともない料理が次々に運ばれ、高級ワインに目を閉じて上を向き「いいね中々…」と、ソムリエに言葉を掛ける隣人に対して、俺はと言えばビールをジョッキで飲み、フォークとナイフは使わずに箸でフランス料理を「キョロキョロ」と、テーブルの上を見回しながら只管、只管……

 すると隣人と何やら話しをしているソムリエが、俺をチラッと見ると「正直申しまして、私はこの料理にはワインではなくビールが合うと思っています…」と、小声で俺と隣人に囁くと「でしょうねぇ~ 僕もアナタと同じ考えです♪」と、隣人はソムリエにビールを頼んだ。

 美味い料理を腹いっぱい食った俺は酔いが回り始め、目の前の隣人に「酒が飲みたい…」と、呟くと隣人は満足そうな俺の顔を見て、支配人に日本酒を注文すると「銘柄指定はございますか」と、柔らかな言葉遣いで俺に視線を合わせ「ワンカップ」と、俺が両肘をテーブルに頭を「ダラ~ン」と、させると「かしこまりました」と、軽く頭を下げ姿を消すこと5分「お待たせいたしました」と、テーブルの上でフタを開けて俺の前に差し出すと「かぁぁー! うめえぇー♪」と、飲み干した俺に隣人が「僕も頂いてもいいですか♪」と、聞き俺が「ういぃー♪」と、答えると「かぁぁー! うめえぇー!」と、俺と同じことやり「あっははははは♪」と、大声で隣人が笑うと店の奥からも楽しげな笑い声が沸き起こった。

 俺と隣人は酒の酔いに任せ、まるで昔からの友人のように肩を並べて手拍子をして俺の歌に聞き入り「カラオケ… カラオケがしたい」と、俺が隣人の肩に両手を添えて寄りかかると「チミィ~♪ カラオケはあるろか~♪」と、隣人は支配人に「かしこまりました…」と、首を捻りながら支配人は姿を消し「ひぃ! ひぃ! ひぃ!」と、蝶ネクタイも曲がり上着もズリ落ちかけながら「お待たせいたしました… はぁはぁはぁ…」と、大きなカラオケを何処からか持ってきた。

 五つ星レストランの中はワンカップを飲みながら男二人が熱唱する演歌が響き渡り、仕舞いにはソファーを席の周りに持ち寄って支配人もソムリエも、店の人達が全員参加の大宴会へと姿を変え時間は過ぎて行った。

 翌日、目を覚ました俺が辺りを見回そうと起き上がると「ズキンッ! ズキズキズキ…」と、二日酔いの兆候が現れ「痛てててて…」と、頭を両手で抑え周囲を見回すと、俺の寝ているベットの横にはパンツ一枚でガリガリに痩せた隣人がうつ伏せで眠っていた。

 眠っている隣人のガリガリに痩せた身体を見た瞬間、俺の頭に過ぎった下着泥棒と防災扉の記憶に「コイツ… コイツならアソコを潜り抜けられる!」と、二日酔いで痛む頭を押さえながら考えたが「何でコイツがここに居るんだ?」と、記憶を辿るものの答えは得られなかった。

 死んだように眠る隣人をそのままにた俺は、風呂へ行き暑い湯と冷水を交互に繰り返しタップリと汗を流して寝室へ戻ると「大変、ご迷惑をかけましたが昨日は楽しかったです、またお誘い申し上げます」と、走り書きを残し隣人は姿を消していた。

 その日を境に、特別好意を寄せている訳でもない隣人と俺は会う事も急に多くなり、エレベーターの前で玄関で会社からの帰り道でと度々会っては話す機会も増え、友達とは呼べないまでも飲みに出かけることもシバシバ、俺にしてみりゃ金持ちの隣人を利用してる訳ではないが、向こうが誘うからと自分に言い聞かせ席を共にした。

 そんなある日のこと、隣人からの誘いで出かけたクラブでのこと「○○さんは女装とかはしないんですか♪」と、ダイレクトに俺に聞く隣人に「おいおい♪ なんだい薮から棒に♪」と、辺りをのボックス席を見回した俺が「こんな美人揃いの店に出入してる君がどうしたんだい♪」と、内心「ドキッ」と、しながら隣人に顔を向けると「いえ、○○さんが女装したら似合うだろうなぁ~ なんて前々から思ってたもんですから♪」と、口元に笑みを浮かべ「帰りに僕の家に来ませんか? そっち方面の雑誌とか本とか♪ CDとかもありますから♪」と、目を爛々と輝かせて俺の方へと隣人は身体を前屈みにした。

 俺はニコニコして女装のことを口にする隣人に「コイツ、ホモなのか…」と、疑念を抱き「○○君はもしかして…」と、俯きながら上目づかいで俺が聞くと隣人は「いえいえ、僕は男であれ女であれ動物であれ、美しいものが好きなだけですから♪」と、否定するものの隣人の目は「ニヤニヤ」と、俺を見ていた。

 虎穴に入らずば虎子を得ずとの諺(ことわざ)では無いが、俺は隣人に誘われるままクラブを出ると自宅マンションの隣人の家へと着いて行った。

 部屋の間取りは俺の家よりも大きい5LDKと流石は金持ちで、中に入ると家具らしきものは殆ど無いガラーンとした、リビングとカーテンの無い窓が印象的だった。

 隣人に招かれて入った6坪の洋間には、PCと巨大な木目の机そして壁一面の本棚に、ギッシリと並べられた女装に関する本が犇き(ひしめき)黒皮のコーナーソファーがドッシリと構えていた。

 本棚に圧倒されるがごとく見入る俺に隣人が「○○さん♪ これなんかどうですか?」と、机の引き出しから何かを出して「どうぞソファーに座って下さい♪」と、俺に声かけながら手渡した物を見て「ドキッ! ドキドキドキドキ…」と、俺を強張らせた。

 隣人から手渡されたビニールに梱包された黒のレースのショーツに見入った俺に隣人は「どうですかぁ、中々綺麗なショーツでしょう♪ これは外国のブランドで肌に優しくフィットして通気性もいいらしいんですよ♪」と、俺の様子を窺うかのような隣人。

 呆気にとられている俺に、次々に手渡しては解説する隣人は歓喜に満ち溢れ「このスリップなんか○○さんに似合いそうなんだけどなぁ~♪」と、黒いスリップの袋を手渡すと無言で俺を見詰め、そんな隣人に俺が「こんなもの似合う訳ないよ~ だいたい俺にはこのレースを膨らます胸も無いしね♪ あはははは♪」と、笑った瞬間だった!

 それは突然だった…「19○○年、○月○日、○○病院にて豊胸手術にてAカップ、乳首と乳輪の拡大手術そして女性ホルモンの投与を開始し、現在は順調に男性器の萎縮が確認されている…」と、PCに向かい椅子に座り背中を俺に向けた隣人が、小声で俺に話し聞かせた。

 俺は唖然として足元を小刻みに震わせ「ど! どうしそれを!」と、顔を両手で覆い深く俯いてしまうと隣人は「アソコは僕の父親が経営しているグループ企業の一つなんです…」と、隣人は声を窄め「ですからそのスリップは○○さんには似合うはず、と言うよりは○○さんの体形に合わせたオーダーメイドなんですよ、それ…」と、俯いた俺に小声で話す隣人に、俺は「じゃぁ! もしかしたらアレは!」と、顔から両手を離し背中を向ける隣人に前屈みで聞くと「えぇ、全てアナタに合わせて僕がオーダーメイドしてプレゼントさせて頂きました… 許して下さい…」と、背中を窄めた隣人。

 自らの過去の経歴を暴露され全身の震えが止まらず、その震えが俺の歯を「カタカタ」と、鳴らした瞬間「貴様ーーー!! よくも他人の経歴をーーー!!」、怒鳴りながら立ち上がった俺は、立て続けに「じゃぁー! 俺の下着を盗んだのもオマエかあぁーーー!!」と、後ろを向く隣人に殴り掛からん体制になった瞬間「下着?」と、ポツリ呟いた隣人に俺が「惚けるなあぁぁーー! 貴様が防災扉の隙間から進入して盗んだ俺の下着のことだあぁーー!!」と、隣人に掴みかかろうとした瞬間「この通り! この通り謝罪します! 僕は病院のデーターでアナタを知った時からアナタと同じ空気の中に生きて見たいと思って! それで! でも信じて下さい! 僕じゃない! 泥棒なんて僕は知らない! 本当なんです! 信じて下さい!」と、椅子から降りると俺のソバに来て土下座して謝った隣人。

 数時間、俺は殴り掛かろうとする自分を抑えながら隣人の話しに耳を傾けた結果、隣人は下着泥棒ではないことが判明した。

 煮え切らない思いのまま隣人の部屋から出ようと立った時「御願いします! ここまで話した以上、僕はアナタに嫌われるでしょ! だったら! 最後に御願いです! 僕に… 僕にアナタの美しい姿を… 御願いします!! 最後に一目… 一目だけでいいんです… 御願いします… うぅぅぅぅ…」と、隣人は俺の足にしがみ付いて、想いを俺に伝え号泣してしまった。

 足にしがみ付いた隣人を「こらぁ! 離せ! 離せ!」と、振り払おうとしたものの、隣人は修羅場のごとく俺にしがみ付き「わかったよ… 一度だけだからな… オマエには世話にもなったしな…」と、俺は隣人に生まれて初めての女の姿を見せることにした。

 号泣し「じゃぁ、これとこれを…」と、引き出しから持ち寄った下着と服を俺に渡し「向こうで待ってますから…」と、隣人は部屋を出て行った。

 他人の家で女になるなんて、俺の中では絶対に無いことだったが、二度と俺に近づかないと言う約束を取り付けた俺は「スルスルスルゥ~」と、裸になりレースショツに脚を通し、腰にガーターベルトを巻きつけストッキングに脚を入れ、5段掛けホックのブラを身に着けると白いリボンの付いたブラウスを、そしてピタリとフィットしタイトスカートを履いた。

 準備が出来た俺が「いいぞぉ~」と、怪訝な声をドアに向けると、リビング側から「こっちに… こっちに着て頂けませんか…」と、言う隣人の声に「全く!」と、不機嫌になりながらリビングに移動したものの隣人の姿はなく「こっちに… こっちに来て下さい…」と、別のドアの隙間から俺に声だけ発した隣人に「おい! いい加減にしろよ! オマエ!!」と、移動してドアに手をかけた瞬間!「うおぉーりやぁぁぁーーー!!」と、突然片手を掴まれたと思った瞬間、俺の身体は宙に舞い「どすん!!」と、激しい音を立ててベットの上に落下した挙句、脳震盪を起こしたのか殆ど動けなくなってしまった。

 真っ暗な部屋のベットの上で俺をうつ伏せにして、両手が後ろ方向で何かで縛られるのを動けない俺は黙って放置するしかなかった。

 グッタリした俺はうつ伏せから仰向けにされると、部屋に小さな灯りが灯され瞼の外から光を感じると「僕はこんなにガリガリですが実は柔道は3段なんですよ… ましてアナタに着せたのは動きの鈍くなるタイトスカートでしょ…」と、瞼の外側から後ろ手に縛られた俺の頬を撫でる隣人。

 頬を撫でられながら目を閉じたままで「なんでこんなこと…」と、俺は震える小さな声で隣人に問うと「僕はアナタを前から欲しかった… でも隠れ女装子のアナタとの接点はなく、こうでもしないとアナタの肌に触れることなんて出来ないでしょう…」と、動けない俺の耳の中に「ニチャニチャ」と、嫌らしい舌舐擦り(したなるずり)が聞こえると隣人は俺の耳の中に、ザラついた男の舌を入れて来た。

 隣人に抵抗すべき腕は縛られ、脳震盪のショックから意識も朦朧とし脚を動かすことも「やめろおー!」と、怒鳴ることも出来ない俺は、黙って耳の中を隣人に貪られるしかなかった。

 耳の中で隣人の舌先が蠢く(うごめく)度に「………」と、声にならない声を身体の中で発するように、腹の筋肉を「ビクンッ!」と、ビクつかせると「感じているんですね♪ 感度は最高なんですねぇ~♪」と、俺の耳に真傍でニヤついた声を伝えた。

 

 


 
◆◆◆◆◆4話






 俺に添い寝するかのような姿勢で耳の中から舌を出した隣人は、そのまま耳から首筋をナメクジが這うよう「ユラユラ」と、時折「チュゥ」と、啜る音わ出し動けない俺のブラウスのボタンを一つ、また一つと外して行った。

 仰向けの俺に対して右側に横向きの隣人は、左手で俺の髪の毛に指を絡め首筋に唇を寄せ「レロレロレロ」と、舌を前後左右へと右往左往させると「いい味だ…」と、小声を放つと開かれたブラウスの襟元を右手で鷲掴みすると突然「ズサッ! ビリビリビリッ!」と、引き裂くように俺の左側へと胸元を広げ「綺麗だよ♪ 同性愛者じゃない女装子が恥辱される様に芸術を感じてしまうよ…」と、真横から俺の腹の上に馬乗りになった隣人。

 徐々に意識がハッキリするようになった俺が、少しずつ目を開けると「意識がハッキリしてきたようだね♪ これからアナタは僕に恥辱され、女として辱めに唇を噛み締めることになるからね♪」と、俺の顔を覗き込むと両手でブラウスの襟元を左右に「ビリビリビリビリー!!」と、力任せに隣人は引き裂くと「スッ! スススッ!」と、両肩からスリップとブラジャーの肩紐を両手で同時に引き下ろし「夢にまで見たアナタの乳房… これで僕の物に… ふふ♪ ふふふふふ♪」と、馬乗りの隣人は俺の胸元に食い入る目つきをした。

 隣人の小刻みに震える指先が、スリップに触れると胸元のレース部分をゆっくりと下に引き「ふふふふふ♪」と、嫌味な笑い方をすると両手をブラジャーのカツプに添え「これで、これで… アナタは僕の物だね… うふふふふ♪」と、そっと持ち上げた瞬間「やめろおぉーーー!!」と、出なかったはずの声を出した俺を見た隣人は、急に目を大きく見開き一瞬「ビクンッ!」と、全身をビクつかせた。

 俺の怒鳴り声で隣人のカップを持つ手が「ピタッ」と止まると、ベット横の机から鋏を出してブラジャーの脇紐と肩紐を切り離しながら「アナタは今、男としてではなく女として羞恥心に見舞われ大声を出したはずです… 男なら胸なんか見られても平気ですからね… アナタは今、女として辱められる恐怖を感じているはずです… そこなんですよ♪ 僕がアナタのような女装子(おんな)に拘る理由はね… 普通の女性は生まれながらにして異性に犯されるのではないかと言う危機感を、無意識の内に常に持っています… でもアナタのような女装子(おんな)は、そう言う危機感を殆ど持っていないから、恥辱される恐怖感は普通の女性の何倍でしょうか… いえ何百倍でしょうかねぇ~」と、怒鳴って肩で息する俺に囁くように語り聞かせた隣人。

 隣人は意味不明な理屈を俺に語り聞かせると「では、アナタの乳房を拝見させて頂きますか…」と、隣人は冷静に俺に声かけると「サッ!」と、ブラジャーのカップを俺から奪い、俺は唇を噛み締め目を瞑り顔を左に倒した。

 唇を噛み締め顔を倒した俺に隣人は「美しい… 言葉に言い表せない… この世にこんなにも美しい乳房があるだろうか…」と、恥ずかしさに肩を震わせる俺に「綺麗なピンク色の乳首とそれを支える何処までも白い乳房… なんて見事なバランスなんだぁ~♪」と、何かの漫画のように、絶賛する隣人は「誰もこの乳房を… そして乳首を味わった者はいないんですねぇ~♪ 何て美味しそうなんだ♪ 食べてしまいたいとはこのことですねぇ~♪」と、一人股間を硬くして俺の胸を褒め称えた隣人。

 そんな隣人に俺が「もういいだろう!! 十分見ただろう!! 早く俺を自由にしろ!!」と、少し起き上がりながら馬乗りの隣人に怒鳴ると隣人は「アナタは今、純粋な女の叫びを僕に放ちました… でも、やはり言葉が嫌ですねぇ~ アナタほどの美しい女性には相応しい言葉遣いがあるでしょうに…」と、俺の両肩スレスレに両手を「ドスンッ」と、着いた隣人は俺の顔の前に自らの顔を寄せると「美しい女性には美しい言葉を使って欲しいのです…」と、俺から離れると馬乗りに戻り「アナタは今、スカートを捲り上げられるもしくは剥ぎ取られると言う新たな恐怖に駆られていますねぇ~ 当然です胸を晒された女が次に恐怖を感じるのは下半身ですからねぇ~ ふふふふ♪」と、俺に目を合わせた瞬間「やめろ! 俺はホモじゃない! いい加減にしやがれーー!!」と、隣人を馬乗りにしたまま、俺が全身を波立たせ暴れると「バシッン!!」と、突然の平手打ちをした隣人が「手荒なことはしたくないんです… 僕は紳士ですから髪を振り乱して抵抗する女性を傷つけるようなことはしたくないんですよ…」と、俺の叩いた頬に手を添えて撫でる隣人。

 隣人は一度俺から離れるとベット横の椅子に腰掛け「今のアナタは抵抗出切る状況にはありませんし、アナタの自由を奪っているロープを解いたところで、女性ホルモンの投与を受けているアナタは柔道3段の僕には100%勝てませんから、おとなしくしていた方が最善と思いますが如何でしょうか…」と、隣人とは逆に顔を向ける俺に話しかけた。

 椅子から立ち上がった隣人は俺の足元に腰を下ろし「スゥゥゥーーー! ツッツッ!」と、ストッキングの上から俺の足の爪先を指でなぞりながら「手入れの行き届いた綺麗な足だぁ~♪ 普通の女には解からない恐怖と戦っているアナタの顔… 美しいですねぇ~♪ 僕の指がやがて上へと伸びスカートの中に入って来ると言う恐怖、そして裸にされて操を奪われると言う恐怖と戦う、アナタの顔が僕にはどうにもならないほど美しく見えます…」と、恐怖で全身を震わせる俺を見抜くように語る隣人。

 ジワジワと俺を追い詰める隣人に「やるならサッサとやればいいだろう! やりてぇんだろう! どうせ犯すならサッサとやれよ!!」と、上半身起き上がった俺は目の前の隣人に大声で叫ぶと「あれあれ… さっきもいいましたよねぇ! 美しい女性は美しい言葉をと! 僕を怒らせないでくれませんか? 僕は自分を止められなくなる性格なんですよ! 生きてここを出たければ僕の言うとおりに女らしい言葉を使って下さい、これからアナタの身に何が起ころうとね!」と、低い声で俺に言い放つと「トンッ」と、俺を手の平で後ろへ押した隣人。

 俺は再びベットに仰向けに倒されると隣人の指は爪先から足首へ、足首から脹脛へとスケートのように滑り、滑る度に声の出そうになる俺は全身をビクつかせ、必死にヨガリ声を押し殺し唇を振るわせた。

 隣人の指がストッキングの上を予期せぬ方向へ滑ると同時に、隣人の唇から生暖かい吐息が俺の肌へと伝えられ時折「ビクンッ!」と、俺の全身が揺れると「いい匂いだぁ~ なんていい匂いなんだぁ~」と、俺の脚を愛撫しながら時折出す隣人の声は、俺の心を逆撫でしていた。

 俺の脚を愛撫し、上に上にとスカートを捲くり上げた隣人が「もう限界だな…」と、突然ベツトから降りると俺を力任せに横向きにし、スカートのファスナーに手を掛けた! 咄嗟に俺が「せよ! やめろー! やめろー!」と、全身を前後して抵抗すると、隣人は「あらら… まだわかってないようですねぇ~ 美しい女性は美しい言葉をの意味が…」と、突然俺を仰向けにすると「バシンッ! バシンンッ!」と、隣人は何かでスカートの上から俺の尻を叩き、俺は「痛えぇぇー! 痛えぇぇー!」と、激しい痛みに悲痛な声を上げた。

 俺の尻を何かで叩く隣人が「さぁ! 言ってみて下さい! やめろでは無くヤメテーでしょ! さあ! 言って見なさい!!」と、激しく尻を何かで打ち付けられた俺は「やめろー! やめろー! やめ… やめ… ヤメテェェェェー!」と、躊躇しながらも俺は初めて女言葉放とと隣人は打つのを止め「そうですねぇ♪ 美しい女性は女性に合う言葉を使うことが大切です♪」と、俺のスカートのファスナーを降ろすとスカートを俺から奪い取った。

 胸を晒されスカートまで奪い取られ惨めな姿になった俺は「くぅ…」と、悔し涙に目を潤ませ顔を横にすると「美しい女性の美しい涙に勝る美学はないでしょう…」と、悔し涙する俺に意味不明な哲学を語る隣人。

 ベットの上で下着だけになった俺を、ベットの周りを左右に移動しては腕組をし、首を捻っては右往左往を繰り返し「何処から見ても僕の理想の女性でしょうかねぇ~♪」と、悔し涙の俺にはお構いなしに、俺の身体を横にしたり勝手に脚の位置を変えたりと忙しく動き回る隣人。

 部屋の中で歓喜しながら俺を鑑賞しては「うふふふふ♪ ふふふふふ♪」と、ニヤニヤする隣人が再びベットの上に来た時「さてさて、いよいよアナタの秘密の部分を見せてもらいますかねぇ~ あっと! 動かないで下さい♪ 鋏でパンティーを切っちゃいますからねぇ~ 怪我しちゃいますよ♪ それにしてもガーターと言うのは美しいのだけど、パンティーを脱がせるためには吊紐を外さなきゃならんし… 外さないで方が好きなんですがねぇ、だからと言って吊紐の上からパンティーを着けられるのも何と言うか…」と、ウンチクを語りながら冷静に俺の両脚を開いて、パンティーに鋏を入れた隣人。

 パンティーに鋏がはいり下半身を人目に晒された瞬間「うぅぅぅぅ……」と、俺の閉じられた瞼から大粒の涙が溢れ始めると「美しい… 恥辱され耐えに耐えた上で耐え切れずに流す美しい女性の涙… これほどに感動的なシーンはないでしょう…」と、隣人は不思議な哲学をブツブツと語り、ペニスと玉を晒された俺は涙を止めることが出来ずに、身動き出来ぬまま延々と咽び泣いた。
 
 俺は泣きながら自分の姿を客観的に考え、考えれば考えるほどに「うぅぅぅぅ…」と、涙は止まることなく流れ続け、隣人はと言えば俺の股座(またぐら)に顔を入れ「これが萎縮した性器なのか! こんなにも小さくなるのか! だいいち親指ほどもないじゃないかー! 玉だってゴルフボールの半分… これは見事なまでの萎縮だ!」と、隣人の荒い吐息が俺のペニスと玉袋に「はぁはぁはぁはぁ」と勢い良くあたり俺は「うぅぅぅぅぅ……」と、惨めな気持ちで涙を流す。

 隣人は咽び泣く俺の体位を自在に変えては「美しい… 綺麗だ…」を連発させ最後は縛られたままの俺を仰向けにし、尻を突き出させ「もうダメだ… やられる…」と、俺の心は惨めさで溢れているものの、数分経っても隣人は俺に掴みかかることなく「美しい…」と、俺の耳元で囁いた隣人に俺が「やりたいんでしょ! やりたいならサッサとすませてよぉ!」と、叩かれるのが嫌で女言葉を使って隣人に話すと、隣人は驚いたような裏声で「えぇ? ちょっと待ってくれ! 僕はホモじゃない! 美しいものを追求しているだけだ! 勘違いしないでくれ!」と、突然慌ててベットから離れた隣人。

 そんな隣人に俺が「そんなこと誰が信じるんだ! 散々俺を辱めておいて今更、ホモじゃないなんて!」と、声を少し荒げると隣人は「見てくれ! 僕は勃起してないだろう! ホラ! 見てくれ!」と、俺の見えるところでズボンを降ろしパンツ一枚の様子を見せた。

 隣人はズボンを履くと俺に「これからロープを解くけど、決して暴れたり僕に掴みかかったりしないこと! それから今夜のことは部屋に取り付けられたカメラから別の場所のPCに全て記録されているからね! 意味わかるよね! 僕に何かあれば今夜のことは全て明るみに出るし、アナタの会社や家族にも知られることになるから… 意味を理解してくれたかい?」と、隣人は冷静に俺に話しながらロープを解くと寝室を出て行った。

 最後まで行かなかったのは不幸中の幸いだし、隣人は俺の身体では耳以外は何もしていないしと、ホッとして自由になった腕をベットニ広げたものの不思議と隣人への憎悪も恨みも沸いて来なかったのは事実だった。

 あれほど、美しい、綺麗だと褒め称えられ絶賛を繰り返されれば女装子なら悪い気はしないだろうし、まして犯された訳でも味見された訳でもないしと自分に言い聞かせ、寝室を出て最初の部屋へと移動しよう一旦リビングに出ると「おい! ちょっ! そんな格好でレディーがウロウロするもんじゃない!」と、隣人は両手で顔を覆い傍にあったバスタオルを俺に投げつけた。

 どうやらプレイ後の隣人にとって俺の存在は、女装子ではなく本物の女と言う設定に変わったらしいと俺は悟り、隣人に投げられたタオルで身を包むと最初の部屋へと急いで俺は移動した。

 最初の部屋に戻った俺は服を着ようとソファーに座ると、部屋中に放置された夥しい(おびただしい)無数の女物の下着や靴下に服に目を奪われ「よし♪」と、ばかりに着替えるとリビングへと移動しソファーに座った隣人に「ねぇ♪ 私、喉渇いちゃった…」と、後ろから声をかけると、女言葉に反応するように「スッ」と、俺の方に振り向いた隣人が「うおぉぉーーー!! 凄い! 綺麗だよおぅー!」と、デニムのミニスカートにニーソックスとタンクトップの俺を見て、立ち上がって歓喜な声を発した隣人は呆然とその場に立ち尽くしてしまった。

 そんな隣人に俺が両手を後ろに組んで「似合うかなぁ~♪」と、俯き加減で恥ずかしそうに身体をクネクネさせると隣人は、息を呑むように首を何度も大きく上下に振って見せ「飲み物! 持ってくるからぁ~♪♪」と、目を俺から離さずにキッチンへと走り去った。

 ソファーに座ってテレビを見ている俺に隣人が「はぁ~い♪ おまたせー♪」と、アイスミルクティーを作ってきてくれ「綺麗だぁ~♪」と、俺の隣に隣人が座ったのを見計らって脚を組んで見せると、隣人の視線は俺の太ももに集中して「ピクリ」とも動かなくなってしまった。

 俺の太ももに見入り動かなくなってしまった隣人に、俺が「今度からここに来ようかな~♪ ここに来ても、いいかな…」と、精一杯、女を演じる俺に隣人は「いいけど… 我慢できなくなってアナタを食べてしまうかもしれないよ…」と、動かずに太ももに見入った。

 俺は考えていた… コイツと親しくなって盗撮された今夜のファイルを奪い返すことを… そのためならコイツの前で女になることは吝か(やぶさか)ではなかった。

 その日から俺は隣人の家を訪れては、女言葉を使う女装子に変身し勿論、他人にみせたことのない化粧顔と好みのカツラでフル装備をした。

 隣人は日に日に俺に心を開き、俺に自分好みの女の名前を付けては家の中だけは俺を女の名前で呼び、俺も女としての言葉や振る舞いを勉強し、今では着物の時は三つ指着いて「おかえりなさいませ…」などとフザケることも。

 ただ、こんな日々が一ヶ月を過ぎた辺りで隣人に妙な行動が出てきた、と言うのは妙に俺の身体に触ると言う行動… これはもしやと思いつつも隣人(かれ)に指定されて下着を身に着けベットに横になる俺だった。

 そしてある日のこと、俺が自分の家で洗濯してベランダに、洗った下着とパンストを干して会社に出かけ戻ってみると、無くなっていたのだった。

 当然、犯人は解かっていると思いつつ、彼の家へと向かったものの彼の家のチャイムを何度押しても応答なく仕方なく彼から貰った合鍵で中に… 中には彼の姿はなく、自宅へ戻ろうと玄関に出ようとした時「どうした? こんなとこで?」と、突然声を掛けてきた彼に、俺が「何処行ってたの!」と、不機嫌な顔を見せると彼は「おいおい… 今日は朝から街から出るからって言っといたろ? 忘れたのか?」と、俺の顔見て微笑みながら俺の腰に手を当て中に入った彼。

 そして俺は彼に言った…「またなの… また下着とストッキングが無いのよぉ~ 今朝、出掛けに干して行って戻ったら無くなってるのぉ…」と、困った顔見せて大窓のカーテンの外を見る俺に「確か最初のころにオマエ言ってたなぁ、そんな風なこと…」と、俺と横並びで俺の腰に手を添える彼に「ねぇ… アナタじゃないよね…」と、俺がションボリして囁くと彼は「よせやい、本物のオマエが傍にいるのになんで下着なんだよ? オマエの使用済み下着なら興味ない訳じゃないけど、洗ったもんなんか興味ないよ♪」と、俺を自分の方へ「クイッ」と、引き寄せた彼。

 すると彼が俺に「だったら一度仕掛けてみりゃいいだろ… 例えばさあ、防災扉の下に小麦粉撒いとくとか… そうすりゃそこを通ったらバッチリ解かるだろうし」と、彼は俺のために作戦を立ててくれ、翌日俺は濡らして脱水しただけの下着を干して会社へと出かけ、同時に彼が自宅から監視してくれることになった。

 そして俺はある意味ワクワクしながら仕事を終えて自宅へと向かった…… 

 



 

◆◆◆◆◆5話





「ねぇ! ホントに見てたの!」

 俺は仕事から帰宅して愕然となった、それと言うのも彼の言う通りに防災扉の下に小麦粉を撒いたものの、誰かが通った形跡はないばかりか干して入った洗濯物がが忽然と消えたのだった。

 彼は彼で一日中ベランダを見ていて首がおかしくなつたと言うし、俺の下着は無くなるわで結局ベランダには何も干せなくなってしまい未だに俺の人に言えない夢は実現していない。

 そればかりか、盗撮されたファイルを取り返そうと近づいたはずだったのに、彼とは親しくなる一方で実際のところファイルのことなんてどうでもいいとさえ思うようになっている。

 幸いにも彼からは未だ身体を求められてはいないものの、彼と共にするベットの上で時折「このまま抱かれても…」なんて思うこともしばしばあって、実のところ困惑ぎみだ。

 彼は俺を完全な女としてみてくれてるし、俺自体も彼の前では素直になれるし、彼と一緒にいることも最初は苦痛だったけど、今じゃ一人で自宅にいるよりは彼と過ごす時間の方が多くなっている。

 休みの日なんかは、完全にフルタイムで女になっている俺に対して、彼もまたフルタイムで俺を女として認識し最近の彼の口癖は「あぁー! オマエと何処か旅行にいきてぇー!」と、俺の膝枕で愚痴る始末。

 そんな彼が俺に都度聞かせる話しは、赤道付近に買ったと言う無人島で一度しか行ってないが、水もあって白い砂がキラキラ輝きエメラルドグリーンの海が島の周囲を囲むと言い、俺を連れて一緒に行きたいなんて夢見たいなことを延々と繰り返す彼は「僕はさあー、オマエとこの場所から行きたいんだよ! 背広着たオマエじゃなくて俺のために輝いてるオマエと行きたいんだ!」と、女になっている俺と行きたいと言う。

 かと言って、170センチの俺がいくら女顔してるからって言っても女装子だと直ぐに周囲に知れ渡るだろうし、彼の要求を飲むけにも行かず「無理なこと言わないのおぅ…」と、あやすのが精一杯の俺だった。

 そんなことを繰り返していたある日のこと、ネグリジェに着替えた俺が寝室に入って行くと「なぁ、オマエ僕に聞きたいことあるんじゃないのか?」と、ランニングシャツと下に寝巻きズボンを履いた彼がベットに腰掛けて俺に聞き「え? 何?」と、聞き返しながら彼の横に座った俺に、彼は「ここはさっ! 俺の家って言うより二人の家になっちゃったから、別にオマエが何しようといいんだけど… 探し物してる見たいだし…」と、横に座った俺の方に身体の向きを変えた、彼が「最初の頃、オマエを盗撮したって僕が言ったアレさ…」と、少し俯いた。

 彼の言うことは正しかった… 確かに俺はこの家の隅々を探し回っていたが、彼に知られていたとは思ってはいなかったから彼に言われた時は正直「ドキッ!」と、慌てて冷静さを装い「アナタの言う通りよ… でも… でも違うの… 信じて! 私は最近になってどうでもいいって思い始めて来て… 一緒に寝起きを共にして御飯も食べて… 今更って気がしてる」と、両手を膝の上に置いて俯き加減で話す俺に彼が突然「すまない! 勘弁してくれ! アレ… 嘘なんだ! オマエにはいつ話そうってずっと悩んでた… オマエと親しくなりたくて、オマエとこうして過ごしたくて… オマエに嫌われたくなくて…」と、彼はベットから降りると俺の足元に土下座して頭を下げた。

 そんな彼の両手に手を重ねた俺は「ねぇ! もう遅いし寝ましょう♪」と、声掛けて顔を可愛く傾けると彼は「許してくれるのか?」と、立ち上がりざまに俺に聞き、俺が「私も家捜ししてたしね♪」と、彼に精一杯の笑顔を見せた。

 俺と彼の真ん中にあった垣根が取り外されたような気がした俺が、彼に「これから… これからよ! もしアナタが私のこと… その… 私のこと欲しくなったら、いいよ… しても… 私の処女貰って欲しいの…」と、頬を紅く染め顔から火が出そうになりながら伝えると、彼は静かに俺の唇に自らの唇を重ね、俺のことを抱きしめると俺は「嬉しい…」と、涙を零した。

 そんな心トキメク出来事の後、俺はいつ彼が俺を欲しいと言うかも知れないと、入念に肌の手入れを欠かさずと言った日が続いた頃「すいません… ○○なんですが、どうも身体の調子が悪くて…」と、会社に休みの連絡を入れ俺は会社を休むことに。

 会社を初めて休んだ俺にとって、平日に休むことに罪悪感を覚え書斎からPCをリビングへと運び、会社で遣り残した企画書の残りを… そのつもりが頭が重く結局、リビングのソファーで横になっていると「あれ? どうした? 出かけた音がしなかったから心配になって見に来たんだが…」と、俺を心配して彼が来てくれた。

 俺の額に自分の額をくっつけて「少し熱があるんだな」と、手馴れた様子で脈を取ったり解熱剤を持って来てくれたりと、彼は俺の看病をしてくれたものの「すまん! そろそろ時間が無いから僕は行くけど、何かあったら直ぐに連絡してくれ…」と、彼は家を駆け足で出ていった。

 彼が出て行って2時間ほどしたころ、熱も下がり昼ごろには元通りになった俺は「洗濯でもしながら仕事するか…」と、洗濯機を回しながら仕事をし終わりベランダに女物の下着とストッキングを干し、そのままベランダの見えるソファーに横になって養生をしていた。

 風に「ヒラヒラ、ユラユラ」と、舞い踊る自分の下着を見ている内「あぁ、可愛いなぁ~」と、何か「ホッ」と、して心が癒される気がし、パンティーストッキングの足の部分が一本ずつ風に乱れるようにスリップに絡み付いては「スッ」と離れ、離れたと思うと「クルクルクル~」と、回りながら凧(タコ)のように風と戯れていた。

 洗濯物がぶら下がった丸い吊器具は、揺れる下着たちにつられ自らをも左右に揺らし、楽しげな踊りを窓の内側にいる俺に見せてくれた。

 やがて風もおさまり洗濯物も動かなくなった時だった「あれ? 何だろう…」と、俺の目の前のベランダの上から「ピカピカ」と、小さな光を放つ何かがゆっくりと舞い降りて来たと思うと「ピタッ!」と、動きを止めた。

 ソファーに横になっていた俺が「ガバッ!」と、起き上がると、その光るものは外側からベランダ側へと弾みをつける様に前後を何度も繰り返した瞬間!「バサッ! バサバサバサ!」と、まるで鳥の羽ばたきに似た音を出して、干されたパンティーに絡みつくと「グイッ! グイッ!」と、パンティーは外側へと引っ張られ「パチンッ!」と洗濯ばさみがが外れると「スルスルスルーッ」と、俺のパンティーはベランダから外側へそして、上へと引き上げられて行った。

 突然の出来事に、両手を胸にクロスさせ両肩を手で押さえるように自らを抱きしめた俺は、息を飲んで干してある洗濯物を見詰めると「スルスルスルーッ ピカピカピカッ」と、さっきと同じように降りて来た物体を凝視すると「釣具?」と、目を大きく見開きピカピカ光る物体に見入ると、鏡の付いた釣具だったことが解かった。

 鏡のついた釣具は再び、さっきと同じ動きをしてベランダの外側から内側へと弾みをつけ、洗濯物に絡みつくと「ガシャガシャ! バサバサバサ!」と、洗濯ばさみに音を出させ「パチンッ!」と、洗濯ばさみが外れた瞬間、絡みついたパンティーとスリツプそして、ストッキングまでもが一度に釣り上げられて上へと引き上げられて行った。

 その光景にショックを受けた俺は絶句し、窓に持たれて立ち尽くすと「そうだ!」と、慌てて女下着の上から男のズボンと服を着て家から出ると「バタバタバタ!」と、廊下を非常階段のドア目掛けて走った。

 非常階段のドアロックを解除しようとしたものの「緊急時以外の開閉は出来ません」と、ランプが点灯し止む無く俺はエレベータで下へ降りると、玄関目指して猛ダッシュした。

 玄関を出て外へと走り出した俺が見たものは、背中にリュックを背負い片手に竿入れを持ち、サングラスに帽子をかぶった背広姿の男が、交差点の横断歩道を駆け足している姿だった。

 逃げるように駆け足する背広の男を見た時「あれ?」と、見覚えのある姿に「何故?」と、言う疑問が俺の脳裏を掠めた。

 マンションの玄関に入った俺は、ついでに郵便受けから郵便物を取り出し、管理人室の窓をノックした…「あぁ、外の非常階段かい? あれはねぇ、中からは何かあった時しか開けられないけど、設備関連の業者さんたちは自由に出入して日々の点検とかに利用してるんだよ… まぁ、限られた人達だけどねぇ…」と、非常階段のことを何気なく聞いた俺に新設に教えてくれた管理人。

 家に戻った俺はソファーに腰を下ろし「ジーッ」と、窓の外を眺めながら管理人さんの話を思い出すと、同時に下着泥棒が彼ではなかったことに胸を撫で下ろしていた。

 サングラスに帽子で顔は隠していたものの、あの特徴のある駆ける姿と釣りが趣味なのは俺の記憶の中にはただ一人、裏付ける証拠は必要ないが「何故下着なんか…」と、言う疑問が俺を悩ませた。

 今まで盗まれた下着は、パンティーが6枚にスリップが3枚とブラジャーが3枚、ガーターストッキングとパンティーストッキングが合わせて12足と大した被害ではないが、どうしても下着をあの人が盗む理由が見当たらずモンモンとして夕方を向かえた。

 ブラジャーを幅広のスポーツブラに、パンティーラインを隠すためにボクサーショーツに履き直して、男姿で近所のスーパーへ買い物に行くと故郷名産展が開催されていたのを見て「彼の生まれ故郷も知らないんだ、俺…」と、ブルーな気分に落ちてしまった俺に「旦那さん! 毎度! いいのが入ってるよぉ!」と、突然「ポン」と、俺の後ろから肩を叩いた顔見知りの魚コーナーの店員さん。

 魚コーナーに行くと「今朝あがったばかりのカツオ! 脂ものったいいもんだよぉ!」と、俺を活気づけさせ「よし! コイツをくれ!」と、乗せられるように買い物カゴにカツオを入れると「しかし、旦那さん♪ 男にしとくのが勿体無いねぇ~♪ アッシの親戚でね! めっぽーな美人がいましてねえ、まぁ美人と言っても男なんですがね! 本人もその気があったりして遂には取っちゃったなんてぇことになっちゃいましてねぇ♪ あっ! そうそうどうですか♪ こっちの生ウニも甘いですよぉ♪」と、威勢のいい店員さんに「じゃこれも貰おうかな♪」と、店員さんの気風を買っての帰り道『遂には取っちゃった… 遂には取っちゃった… 遂には取っちゃった…』と、俺の脳裏を駆け巡った店員さんの言葉。

 家に戻った俺は、男の姿から下着はそのままのワンピース姿になり、キッチンで買った商品を冷蔵庫に入れていると『遂には取っちゃった…』と、言った店員さんの声が脳裏に浮かびあがり「性転換かぁ… でも、彼は俺に女を見ているとは言っても、女装子の俺を好きなわけだし… 性転換なんかしたら嫌われるかも知れないなぁ~」と、俺は性転換の必要性を否定していた。

 俺はワンピースの上からエプロンを身に着け、彼の好物のカツオのタタキを切って皿に盛り付けると、何故か彼の新妻のような心地よさを一人実感していた。

 新妻と言う言葉に心躍らせた俺は足取りも軽やかに「もしかしたら今夜かな…」と、彼に抱かれている自分を想像し、一人頬を紅く染め照れながらソファーに座り時計を見詰めていた。

 結局、その日は彼は俺の身体を求めることは無かったが、初めてベットの上で手を繋いで眠りの国へと旅立った。

 そして翌朝、出勤時間が近づいていた俺は彼に朝のキスをして起こそうとしたものの、突然手を引かれベットの中に… 仰向けにベットに身を沈めた俺の上に乗った彼は「愛しているよ!」と、俺の肩を抱いて唇を強く重ねた。

 突然の出来事に俺の胸は「ドキドキドキドキ」と、高鳴り「彼に聞こえちゃう… 恥ずかしい…」と、心の中で思うと、目を閉じて彼の舌先を自らの舌先で必死で受け止めた。

 彼の指先が俺のネグリジェを「スルスルスルッ」と、撒くり上げた瞬間「汚れてるかも知れない…」と、パンティーに掛かった彼の手に自らの手を重ね「怖い…」と、必死に片方の腕で彼に抱きつくと、彼はパンティーから俺の手を振り解き、恥ずかしさに目を潤ませる俺に「可愛いよ♪ オマエ♪」と、呟くと再びキスをして「そうだな♪ こういうことは暗い時にするもんだな♪」と、俺の両頬に両手を添えて俺の舌に彼は舌を絡めた。

 俺は出勤途中に「何故、彼を拒んだのだろう… あれだけ彼に抱かれることを夢見てたのに…」と、地下鉄に揺られながら窓に映った自分の姿を見詰めていると「あれれ? ○○じゃないか!」と、声掛けてきたのは同期入社で俺とは違う部署にいる男だった。

 同期の男は俺に「いやぁー♪ 最近、釣りに嵌っちゃってよぉ、先輩に連れてってもらってから毎週出かけてるよ~」と、俺に話す同期に「お前、確かゴルフ派じゃなかったっけ?」と、聞きなおすと同期の男は「いゃ~ ゴルフも捨てた訳じゃないんだけど、今度の社内報見ただろ? 部長人事の件! お前の上司の○○課長がどうやら有力らしいのは知ってるだろう~ そこでだ! 俺なりの作戦を立て、課長に今からアピールしよって言うか何と言うかだよ♪」と、自らの出世のために釣りを始めたと言う同期の男に、俺は「○○課長って未だ例のクラブへ通ってんのか?」と、耳打ちして聞くと同期の男は俺に「そんなこと直接聞けばいいだろう~ お前の上司だろうが♪」と、俺に聞き返し更に俺が同期に「そんなこと直接聞けるか!」と、耳打ちすると「それもそうだな♪ あっはははは♪」と、俺に笑い放った。

 毎日顔を合わせていたものの、プライバシーには立ち入らない俺は、直属の上司である○○課長が既にクラブ活動を停止していることを、初めて同期から聞かされた。

 下手に聞いて馬鹿高い料金のクラブに誘われることを懸念したからだったが、実のところ引退したと聞かされてホッとしていた。

 上司の○○先輩とは、滅多に口を利くこともないと言うか、何故か入社以来、先輩からは避けられている気がしていたし、俺も安月給の身でホイホイと先輩に着いて行く気もなかったからか、お互いに当たらず触らずを通して来た、そんな感じだった。

 そんな二人の関係だったが、ある日のこと突然目の前に課長が来て「ちょっと、話しがある!」と、俺は課長に連れられ屋上へ… 屋上の手摺に両手を掛けた課長が俺に「内示が来た! 俺はお前を次の課長に推薦しようと考えているんだ…」と、突然の課長の言葉に俺が「ちょっ! ちょっと待って下さい先輩!」と、普段は課長と呼ぶ俺も余りの驚きに「先輩」と、口走り「いや先輩でいいぞ、今は…」と、横に立つ俺に課長に俺が「いくら何でもそれは… だって係長を経験してない俺がですか?」と、聞き返すと課長は「とにかく! 俺がそう決めたんだ! 嫌とはいわせんぞ!」と、俺の肩を「ポンッ」と、叩いた。

 俺は訳がわからなかった… 突然の課長への抜擢… しかも係長経験も無い俺がだ! あり得ない話しではないが、それはスーパーエリートの話で俺とは無縁のこと「断ろう… 薄気味悪い」と、一人帰宅して悩んでいると「どうした… 灯りもつけないで」と、彼が帰宅したのも解からなかった俺が時計を見て「あぁーん! ごめんなさーい! 今すぐ食事の支度するからー!」と、慌ててソファーから降りると「何か悩み事があるなら、一人で抱えないで僕に相談して…」と、立ち上がろうとした俺の両肩に両手を添えてオデコに軽くキスしてくれた彼。

 俺は彼に打ち明けた… すると彼が「そうだねぇー 病院で言えば看護主任を経験してないナースが突然、婦長の一人に抜擢と言うのは無いことではないけど、パッとしないなぁ~」と、ソファーニ座る俺の肩を抱き寄せた。

 そんな彼に俺が「ねぇ、病院っていい例えで解かりやすいけどさぁ、病院だとどんな時に抜擢されるのぉ?」と、彼に聞きなおすと彼は「そうだなぁー 物凄い能力がある人と見抜かれた場合だろう… あとは適合者が他にいない場合と~ あとは余り口に出したくないげと、ナースがその病院の有力者と愛人関係にある場合と、もう一つ! 愛人にしようと考えている時かな…」と、俺の肩を抱きながら膝に置いた俺の手に手を重ねた彼。

 彼から話しを聞いた俺が「実はねぇ…」と、彼に入社直後に女装クラブに出入してたことや、ここへ来てからの下着泥棒のことを話すと彼は「何故、その課長が犯人だとオマエは思うんだい」と、柔らかい口調で俺に聞き、俺が「歩き方… 課長は学生時代にラクビーしてて大怪我を負ってから片足を引き摺るの…」と、彼に視線を合わせると彼が「それだけじゃ証拠にはならないけど、オマエは白黒ハッキリさせたいのかい?」と、穏やかに俺に聞く彼に「ホントはこのままでいいと思ってるげと、でも… このままだと私… 課長にされて先輩に何かされるんじゃないかって怖いの…」と、俯き加減で声を絞った俺に、彼は「だって、オマエの同期の話しじゃクラブ活動は止めたんだろ?」と、俺の頭を撫でる彼に、俺が「だから怖いんじゃない! 女装子じゃなくなったから怖いのよ!」と、抑えきれない恐怖が俺の声を大きくした。

 彼は俺の心の内を悟ったのか「ギュッ!」と、ソファーの上で俺を抱きしめて、怖さに身体を震わせる俺に「現行犯で捕まえる必要があるな!」と、ある提案を俺に耳打ちした。

 その後、俺が体調不良で会社を休んだ日は朝から課長は得意先へ出かけていて、俺が休んだことを知らずにいたと同僚から聞かされた俺は、次に課長が朝から出かける日を係長との雑談で聞き出し、それを切っ掛けに忘れかけていたあることを思い出した。

 それは、俺が下着泥棒に遭った日は全て課長が朝から得意先へ出かけ、会社には来ていない日だったことだった。

 確信した俺は彼にそのことを告げると、次に課長が得意先へ朝から出かける日に、彼もまたスケジュールを合わせてくれ俺は彼と二人で作戦を入念にベットの上で重ねた。

 そして、いよいよその日がきた……

 

 
 


◆◆◆◆◆6話







 会社に休みの電話を入れた俺は「エサ」の準備をし、彼は彼で外から屋上に上がりPCで遠隔操作の出来るカメラをセットし、とコレクションとして持っていたアメリカ製の警棒を用意した。

 俺は彼の許しを得て女から男の姿に戻り、お互いにPCで出来る仕事を続けながら時間が来るのを待った。

 時計の針が10時、11時と移り変わり「そろそろかな…」と、リビングから窓の外(ベランダ)を見た時、屋上からスルスルと降りて来た釣り糸に「来たよ!」と、隣の家にいる彼に携帯で連絡すると「うん! 見えてるよ!」と、彼はPCでカメラを操作しながら記録を続けていた。

 俺が「エサ」として用意したのは、時間を少しでも稼ぐつもりで脱水したてのボディースーツに、パンティーやブラジャーを縫い付けた重量物だった。

 何も知らない屋上の訪問者は前回同様に釣り糸に鏡を付け、ベランダの外側から弾みを付けてベランダの中へと針先を入れると「ガシャガシャガシャッ」と、音を立て釣り針を見事にボディースーツに絡めると「グイッ! グイッ!」と、引き始めたが重量物の所為か中々外れず「ピンッ!」と、張った糸から風きり音が「ビィィーーン」と、鳴り始めると「いいぞぉ! しっかり映ってるよ! 必死に釣竿を前後に揺らして巻いたり緩めたりしているのがバッチリだ!」と、歓喜する彼が「よし! 僕は下へ行くから!」と、家を出たようだった。

 釣り糸は風を切って何度も音を出し、洗濯バサミは「ガシャガシャ」と、音を放ち「パチンッ! パチンッ!」と、一つまた一つと外れると一斉に「エサ」はズッシリと糸に重さを伝え、少しずつ上へと引き上げられて行った。

 それを見た俺は家を大急ぎで飛び出すと、彼の居る下の非常階段へと向かい彼と合流して訪問者が降りて来るのをジッと待った。

 数分後、上から鼻歌を歌いながらリュックを背負い帽子にサングラスの男が降りて来て、下に居た二人を見るなり「……」と、無言で立ち止まった。

 男が二人を気にしながらゆっくりと階段を下り鉄柵まで来た時「ちょっと話しがあるのですが…」と、彼が相手に話しかけたものの相手は、聞こえないフリをし鉄柵を開こうとした時「ここは開かないよ! 警察に連絡したから…」と、彼が相手に冷静に伝えると突然相手は「ガシャガシャガシャ!」と、鉄柵の扉を前後に揺すり始め何処かに逃げ道は無いかとばかりに、辺りをキョロキョロ見回し慌てふためいた。

 彼が相手に「直に警察がここに来るとアンタは逮捕されるけど、僕たちと話し合う気があるなら電子ロック解除してあげるけど、どうする?」と、必死に鉄柵を抉じ開けようとする相手に静かな口調で伝えると「そうか… もうバレているんだな…」と、ガックリと肩を落としてサングラスを外した相手に俺が「先輩どうして…」と、俺から目を反らす先輩に息を吐き捨てながら一言。

 俺と先輩を「チラチラ」と、見往復させた彼が「とにかくここでは話も出来ませんからね…」と、外側からの電子ロックを解除し彼の家へと場所を替えた。

 彼の家のリビング… テーブルを挟んで彼が先輩に「まず、何故こんなことしたのかと言うことから聞きましょうか…」と、腕組して足を組んで先輩に見入ると、ガックリと肩を落とし背中を丸めた先輩の重い口が開いた。

 先輩は少しずつ俺との出会いを語り始めた……

 数時間が経過し、先輩の心の叫びとも取れる話しを聞かされた俺と彼は、先輩を目の前に責めることすら忘れ話に聞き入り、今後同じことを繰り返さないと言う約束を取り付けた上で先輩を解放した。

 先輩が帰った後、男から女へと身を替えた俺は灯りも付けずに自宅で、一人窓から入る夕焼けに身を染め先輩の話を繰り返し思い出していた。

『俺がコイツ(おれ)と知り合ったのは会社の新人研修… そして初めてコイツ(おれ)を女装クラブへ連れて行った時、コイツが俺の人生を… 女装子としての俺を変えてしまった…』と、先輩は前屈みで両手を組んで一瞬「チラッ」と、俺を見て『初めてコイツの女装姿を見た時、俺は何か得体の知れない激しい渦に巻き込まれた気がした… その正体はその時は分らなかったが日が立つにつれ、その正体が俺に見えるようになったんだ…』と、深呼吸した先輩は顔を深く俯かせると突然『お前が… お前の所為だ! お前がーー!』と、大きな声を出したと思うと先輩は『いや… 悪いのはお前じゃない… 俺が悪いんだ… ふっふふふ…』と、声を震わせ苦笑いをした。

 先輩の語り口調は重く俺に重圧を感じさせ、少し話しては深呼吸を繰り返し『何度かコイツと女装クラブに出入したある日ことだった… コイツが欲しい… コイツを俺の物にしたい… そう、隣で真っ赤なドレスに身を包んだコイツに俺は恋心を抱いてしまってたことに気がついたんだ… 女装子になっていた俺がだ! 女装子が女装子に惚れちまうなんて! しかもだ! しかも俺は女装子として惚れたんじゃなく… 男として、男としてコイツに惚れちまったんだよおーーぅ!!』と、突然拳を握り締めた先輩はやり場の無い拳を振り上げると『ちきしょおぅー! 俺は筋金入りの女装子だったんだぞー! それを… それをーー! コイツが… コイツが俺から女装を奪った挙句に俺を… 俺を男に… 男に変えやがった!!』と、膝に置いた両手に拳を握り締めると『俺は必死にコイツを忘れようとしたさ… 必死に働いてコイツを忘れるために! そうさ! コイツを俺の部下にしたのだって、コイツと同じ空気を感じていたかったからだ!!』と、俺と彼の前で「ポタッ… ポタッ」と、涙を零し始めた先輩に俺は『もういい… 先輩は悪くないです! 悪いのは俺なんです… 先輩の人生を壊した俺が悪いんです!』と、俯いて咽び泣く先輩を庇った俺。

 すると「カタカタカタッ」と、俯いたまま全身を小刻みに震わせた先輩が俺に『いや、悪いのは全て俺なんだよ… お前がここに来る前だって、お前は知らんだろうがお前の居たアパートの真向かいに部屋を借りて、ずっとお前を覗いてはお前と同じ空気を感じていたんだ… 俺はストーカー野朗さ! お前が捨てたゴミを漁り使用済みの下着やストッキングを拾い集めては、お前を思い浮かべて自分を慰めていたよ… だから… だからぁぁー! 今だってお前を身近に感じたくてぇぇー』と、立ち上がった先輩は俺と彼の前で、身に着けていた服とスボンを脱ぎ捨てると『こんな俺なんだよおぅーー! 笑ってくれよ! 笑って… 笑って… うおぉぉぉぉぉぉーーーー!!!!!』と、脱ぎ捨てた背広で顔を覆い、俺と彼に見せた釣り上げられたはずのボディースーツ。

 先輩は釣り上げた俺の下着をそのまま屋上で身に着け、俺を肌で感じていたと言う… 男から女装子へそして女装子からまた男へと我が身を変えた先輩の心の叫びを、マザマザと突きつけられた俺だった。

 先輩は翌日、部長昇進が約束されていたにも関らず辞表を提出し、俺の前から姿を消したものの先輩が辞めた日、会社のゴミ箱から大量のの女性の下着やストッキングが見つかったと噂が俺の耳に入ったが、誰の物なのかは誰も知る由もなかった。

 ただ、何の因果が先輩が辞めた後、係長を超えて課長に昇進した俺は彼との平穏な生活を続ける一方で仕事にも熱中し大きなプロジェクトに参加出来るほどに成長していた。

 そんな矢先だった、会社の休憩室のテレビが「えーここが医療ミス報道がされた○○市の○○病院です! ここには全国から大勢の患者が詰め掛け連日満員の大盛況ぶりを見せていましたが、今は閑散として周囲を報道が取り囲んでいる状況です!」と、リポータの声に目を奪われた俺は、慌ててテレビの前に駆け寄ると「えー! ここは現在外来の全てを止め入院患者だけの治療を行っている状況で、現在ミスなのか自己なのか地検が慎重に対応している模様です」と、リポータの中継は終わった。

 俺はテレビ報道に身体を震わせた… そこは俺が豊胸の手術と女性化治療を受けていた病院だったからだ。

 テレビの報道が終わり仕事に戻ろうかと休憩室を離れようとした時だった… 「あぁぁぁーっと! 速報です! ただ今、執刀医と見られる… 執刀医でしょうか? 執刀医です! 執刀医と見られる男性医師が報道陣から守られるように地検捜査官と玄関を出てきました! 速報です、ただ今執刀医と見られる男性医師が地検捜査員に任意同行を求められたたようです!」と、激しいリポーターの声に再びテレビの前に戻った俺の身体に激震が走った。

 テレビに映った執刀医の顔を見た瞬間、俺の膝は「ガクガクガク」と、震えだし立っていることも出来ずにその場に両膝をついてしまった。

 終業時間を知らせるように「課長、お先に失礼しまーす」と、女子社員に声かけられた俺は頭の中が一杯だった… 携帯に入っていた「今夜は仕事で帰れない」と、彼からの一行のメッセージ。

 自宅に戻った俺は女になることも忘れ、飲んでも酔わない酒を飲みリビングに直座りして夕日の沈む赤(ひかり)と黒(やみ)の境界線を只管、見入っていた。

 俺は一人、彼の家には行かず自宅で眠れぬ夜を過ごし彼からの連絡を待ち続け、出勤時間になろうかとした時、携帯が鳴って「ちゃんと仕事いけよ」と、彼からの一行のメールが俺を泣かせた。

 その日の朝を境に彼からのメールも止まり、彼の帰宅することの無い日が数日続いたある日の土曜の朝、携帯に着信「これから帰る」と、彼からのメールに目を潤ませた俺が「迎えに行く」と、返信すると彼から俺に「ゴメン…」と、返信が来て俺は涙を床に零し何かが俺の中で弾けた。

 彼の家に合鍵を使って入り、彼のスポーツカーの鍵を取ると俺は自宅に戻り支度を整え一階へ下りると、擦れ違う人達の俺を見る目は普通で管理人さんさえ俺だとは分らない様子だった。

 アクセルを踏むと一気に吹け上がる彼の車は、俺の「彼に会いたい…」と言う心に反応するように加速を続け一路、彼の居る病院へと風を切った。

 そして、彼の居る病院へ近づいた頃「来ても大丈夫だよ誰も居ないから」と、俺の携帯にメール… 俺は彼の車を職員専用ではない一般患者用の駐車場へと入れると病院の正面玄関を入った。

 静まり返った懐かしい病院… 年に数回しか検査に来ない病院は俺を女へと変えてくれた二つ目の生まれ故郷… 本来なら数ヶ月後に来るはずだった病院は俺の目に違う形として映しだされていた。

 土曜日といっても普段の病院なら患者とスタッフで御祭り騒ぎになっているはずなのに、懐かしい病院は静寂を守っていた。

 俺が定期健診を受ける階を通り過ぎ、女としての俺が生まれた手術専門の階をも過ぎるとエレベーターはやがて屋上で止まった。

 エレベーターを出ると屋上へ出た俺… そして床にに響く「コツコツコツコツ」と言う靴の音… 風に白衣の裾が靡く… 俺に背を見せ手摺に掴まる彼… 振り向くと俺を無言で見詰めた彼。

 化粧をし、ロングのカツラの上に大きなツバのセレブハットをかぶり、青い空に合わせた薄水色のワンピースに白いベルトを巻き、パンプスを履いた俺のそばに彼が近づいて「ゴメン…」と、小さな声で呟くと「もう嫌疑は晴れたから…」と、ポツリ言うと「騙してた訳じゃないんだ…」と、俺の目を見て両手をしっかりと自らの両手で繋ぎ留め「似合うよ… とても綺麗だ…」と、俺を抱きしめてくれた。

 強く身体が壊れるほどに俺を抱きしめる彼に「ねぇ… 行こうかぁ…」と、抱きしめられたままの俺が彼に言うと「うん! 行こう! あそこへ!」と、彼と俺はそのまま口付けを交わした。

 その後、俺と彼は一ヶ月の有給休暇を取り、遂にやってきた南国に浮かぶ彼の島へ… 白い砂とキラキラ光るエメラルドグリーンの海に囲まれた美しい島は二人を快く向かえてくれた。

 ギラギラに輝く太陽は俺をピキニに替え、彼もまた筋肉質な上半身を俺に見せつけ、二人は海を目の前に手を繋いで同じ時(とき)を過ごした。

 俺たちが到着した後に、次々に船で運び込まれた1ヶ月分の食料と飲み物を置いた船たちは、夕暮れ時のヤシの木に掛かった真っ赤な太陽の中に姿を消した。

 キラキラと光輝く星空の下、時折吹く海からの潮風は俺と彼を優しく包み、二人だけの世界を演出してくれた… 白い砂の上におかれたテーブルに白ワインとグラスを乗せ見詰め合う二人。

 島の上に立てられた小屋から持ってきたランプの炎が、テーブルの上で揺らめくと「幸せかい…」と、彼が優しくテーブルにおかれた俺の手に手を重ね「……」と、無言で頷く俺に「一生、お前の主治医になりたいんだけどなぁ…」と、彼からのプロポースとも取れる言葉が… 

 その夜、俺は恋人として初めて彼に身体を求められた… 彼の愛撫は激しく上へ下へと俺の身体を揺らし恥ずかしいほどに鳥のように鳴き声を上げた俺の身体の上で、彼の身体が反転しシックスナインになった時、俺の顔の上には彼の股間が… 俺は月明かりの中で彼の物を銜えるべく探した… 彼は容赦なく俺のペニスを銜え貪り、俺は激しい快感に何度も身悶えを繰り返し何度もヨガリ声を部屋に響かせながらも、暗さの中で彼のペニスを捜していた… すると俺の顔に何かが「ヌルッ… ヌルッ…」と、滴り落ちてきて、俺は「彼の愛液……」と、滴る先に手を伸ばした瞬間!「クチュッ! ニュリュゥッ!」と、彼の股間に違和感を覚え、彼の尻に両手を回し目一杯頭を持ち上げた瞬間!「ニチャァァァー!!」と、ヌルヌルした何かが俺の顔に辺ったと思うと突然彼が「アァァァーーーン!!」と、女のようなヨガリ声を部屋に放ち腰を左右に振った。

 彼はそんな俺に構わず、俺のペニスに「ヌチョヌチョ!」と、激しくシャブリつき凄まじい快感の中で俺は「ちきしょおぅーー!!」と、彼のペニスを見つけられないまま、彼の愛液の滴る場所に下からムシャブリ付いて舌を何度も滑らると「アァァァァーーーン! アァァァァーーーンン!」と、彼は女のようなヨガリ声と共に尻を上下左右に振って俺の愛撫に反応を繰り返した。

 目を閉じて必死に彼の俺に対する愛にこたえていると、彼は俺の身体を上にそして自分の身体を下に入れ替えて「きてぇぇー! きてえぇー! 僕の中に! 僕の中にきてえぇぇーーー!」と、突然大声を俺に放ち、そして広げられた彼の股間を月明かりが照らした瞬間、俺は萎縮して小さくなったペニスを訳の分らぬままに「ズブリュゥゥー!」と、彼の中に挿入すると胸を揺らしながら腰を前後させた。

 何がなんだか分らないまま腰を振り続けた俺は「イクウウゥゥゥゥゥーーーー!!」と、男の声を出し彼は俺の下で「キテエェェェェーーー!!」と、俺の腰に両脚を掛け離れられないように俺を抑えた。

 俺はイッタ瞬間、彼とのセックスと旅の疲れもあってか混乱したまま彼の中に入ったままで気を失った。


【そして数年後…】

「ねぇー、お母さん、お父さん… 何でお父さんなのにチンチン付いてないのぉ~? ねぇー、何でお母さんなのにチンチンあるのぉ~?」と、物心付いた娘に責められる日々を送る俺と彼は今、彼は娘からお父さんと呼ばれ、俺はお母さんと呼ばれて暮らしている。

 そしていつものように夫婦で談義が始まる…「僕はオマエにさぁ! 一言でも僕が男だっていったかい? 僕はオマエに一言も男だなんて言ってないんだが~♪」と、悪いのは俺だと言わんばかりの態度の彼。

 だから俺も彼に「それにしてもさぁ~ アナタが私(おれ)の手術した時に傍にいた研修医だったなんてさぁ! あんまりじゃなーい! 勝手に私の身体見といてさぁ! 個人情報だつてあったもんじゃないわ!」と、彼を攻撃する。
 
 彼は俺が豊胸手術をした病院で、当時は研修医として俺の手術に立ち会った女性医師で、勇気を持って豊胸手術に挑んだ俺に心を打たれ、自らの乳房を切除し男化したものの迷いもあってか、子宮はそのまま残し性器も女性のままだったものの、術後に都度病院へ訪れる俺に対して男の立場から俺を愛してしまったらしい。

 女から男へ、そして男として俺を愛し、男として俺から精子を摂取して自らの腹で、男として女の俺の子を身ごもり生んだ彼と、女として男の彼に精子を届け、自ら身ごもることも生むことも出来なかった俺が、彼の生んだ子を女として育てている。

 性とはなんだろう…… 彼は今も病院に来る男達の相談に耳を傾け、女になりたいと言う男の夢を豊胸と言う形で答えている。
 
 俺は女として彼を支え、家庭の中で子育てに没頭している… 俺を愛して女装子から男に転じ俺に恋心を抱いた先輩は今どうしているんだろうか。

 そして、この子が大きくなった時、どういう審判を俺と彼に下すのか、不安は一杯あるけれど、今の俺は母親として精一杯の愛情をこの子に捧げたいと思っている。


 泥棒【Ⅱ】完結

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